電通と電通デジタルは5月28日、生成AIおよび大規模言語モデル(LLM)の活用をテーマとした5つの研究成果を、6月8日から開催される「2026年度人工知能学会全国大会(第40回)」で発表すると明らかにした。「創造性の拡張」と「評価・判断の高度化」を軸に、人とAIの新たな協働のあり方を探った内容となっている。
発表論文の概要
発表論文は、「常識の逸脱」を学習する創造的生成モデル、他者の思考様式を学習したAIとの協働が創造的タスクの成果に与える影響、広告コピー品質評価のための自己進化型評価基準、LLMを活用したペルソナベースのデルファイ法による多視点都市政策評価、図形楽譜の視覚的質感を音響へ変換する生成的解釈の試み、の5件。
創造的生成モデルに関する研究では、常識的な解に収束しがちなLLMに対し、熟練したクリエイターが用いる「常識をあえて否定し、非連続な飛躍に至る思考プロセス」を教師データとして与え、Supervised Fine-Tuning(SFT)により学習させる手法を提案した。
実験では、平均的・常識的な解を意図的に回避し、逆転や誇張、概念の結合といった思考を通じて、高い新規性を持つアイデアを生成できることを確認したという。
また、AIとの協働に関する研究では、自己パーソナライズAIと他者パーソナライズAIとの協働を比較し、AIペルソナの性質が創造的成果に与える影響を検討した。
その結果、自己パーソナライズAIは作業のしやすさや信頼感といった操作性で優位だった一方、他者パーソナライズAIは独創性や発想の広がりを高める傾向を示したとしている。 さらに、人とAIの思考スタイルの距離が「中程度」の場合に創造性が最大化される可能性も示唆された。
そのほかの研究
このほか、広告コピー品質評価における評価基準の自動進化を目的とした研究では、Training-Free GRPO(TF-GRPO)を適用し、評価基準が改善過程で変容する「Criteria Drift」を実証的に観測した。
都市政策評価の研究では、500のAIペルソナに都市政策案を13の評価軸で3ラウンドにわたり評価させる手法を検証。図形楽譜に関する研究では、視覚言語モデルCLIPと音楽生成モデルMusicGenを組み合わせ、図形の形状や線の太さ、質感などを音響へ変換する手法を提案している。
電通は、2024年8月に発表した国内電通グループ独自のAI戦略「AI For Growth」のもと、広告クリエイティブにおけるAIソリューション開発に取り組んできた。その一環として、同社のコピーライターが培ってきた思考プロセスを学習したAI広告コピー生成ツール「AICO2」を電通デジタルと共同で開発・導入したほか、電通デジタルはAIを活用した統合マーケティングソリューションブランド「∞AI(ムゲンエーアイ)」を提供している。
両社は今後、今回の研究成果を生かし、人とAIの掛け合わせによる可能性を拡張することで、AIソリューションのさらなる進化を図るとしている。新たなマーケティング戦略や商品開発、広告企画への活用、広告手法の研究・開発、広告評価、アイデア評価などの革新を進めるという。
