
医療機関を巡る課題に人手不足が挙げられます。その要因の1つがデジタル化の遅れです。これは動物病院でも同様で、未だに情報共有の中心はFAXや手書きの連絡ノートといったケースが多いのが現状です。
しかも、ペットを連れてくる「待ちの姿勢」が当たり前な上に、獣医という職人が診察・治療をさばくというマンパワーに依存した構造が根付いています。今後は少子高齢化に伴ってペットの頭数も減少していくと予測されており、動物病院の経営も安泰とは言えません。
2020年設立の当社は動物用製品として世界初の「フアイア」抽出糖鎖TPG―1を配合した動物病院専売製品の製造・販売を手掛けています。分かりやすく言えば、動物用のサプリメントです。ただ、単なるサプリではありません。私はこれが獣医療業界を前進させるためのツールだと考えています。
キノコの菌糸体から抽出されたフアイアは世界で初めて1000人以上の臨床試験で肝臓がんの再発予防の科学的根拠を取得し、英国の権威ある医学誌『GUT』にも掲載された医薬品レベルのエビデンスを持つ唯一無二の素材です。ヒト用で免疫力を保ち、内臓や皮膚、被毛などの健康の維持が期待できることから、当社はフアイアを原料にした犬猫用サプリ『アニミューン』の製品化を実現しました。
わずか1年で動物病院への導入社数が1000を突破し、現在では3000以上の動物病院に取り扱っていただいています。たとえ有用なサプリであっても、単純に広告を打つだけでは「怪しいサプリ」と見られるだけになってしまう。
そこで私自身、外資製薬企業で営業職として従事した後に、動画とマーケティングの知見を活かしたEC支援会社を起業した経験を活かし、まずは獣医師に存在や効果・効能を知ってもらう取り組みから始めました。獣医師向けにオンラインセミナーを開催したのです。
このサプリの意義は単にペットの健康維持だけではありません。目の前の命と真剣に向き合っている獣医師に当社が自信を持って推奨できる治療の選択肢を提供しています。当社は病気になってから治す対処療法の常識を覆し、病気にさせない「予防医療」という選択肢を獣医療の国際的スタンダードにすることを目指しています。これはペットの飼い主には、かかりつけの獣医師から紹介される安心感を届けることにもなります。
私はこれを「MX」と呼んでいます。つまり、医療体験の変革です。治療だけでなく、それを取り巻く体験ごと変えていくものです。ですから、アニミューンも当社との直接契約としています。さらに、3000の動物病院との取引を通じて得たビッグデータは今後、AIによる動物の予防医療にも活用できます。
サプリを通じて獣医療の常識を変えることこそが私の目指す姿なのです。実はこういった想いを抱いた背景には私の原体験があります。獣医師だった父が日々、鬼気迫る表情で動物たちの命を救おうとしてきた姿を見てきたからです。しかし、父の動物病院もIT化が進んでおらず、製薬会社に就職する前まではフリーの映像クリエイターとして独立していた私が動物病院のIT化を手伝いました。
このときに動物病院も企業であるべきだという認識を抱いたのです。この信念は今でも揺らいでいません。アニミューンという日本発の製品で世界中のペットとその家族の愛しい時間を最大化させる。そして日本の獣医師業界を明るいものにしていきたいです。