日本総合研究所会長・寺島実郎「今こそ日本は多国間協調主義を訴えていくべき時」

日本に対するアジアの失望とためらい

 

 ─ 米国・イスラエルによるイラン攻撃が始まって約2カ月半、世界経済が混乱する中で寺島さんは日本の現状をどのように受け止めていますか。 

 寺島 今、日本の大変重要なテーマになっているのが、アジアダイナミズムとどう向き合うかということです。ものすごい勢いでアジアの米国離れが進んでいる中で、同時にそれがアジアの日本離れにもつながっているということです。 

 まず経済人として覚えておくべきこととして、貿易立国である日本がどこの国と輸出入をしているのか。2025年の統計が出てきまして、貿易総額において、米国は14.9%、中国は20.3%、アジアが51.7%のシェアでした。 

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 つまり、中国を除くアジアが31.4%を占めているわけで、中国よりもASEAN(東南アジア諸国連合)やインドなどとの関係が、日本にとって徐々に重くなってきているということです。 

 ─ それくらい東南アジアなどとの貿易が増えてきたと。 

 寺島 ええ。ですから、日本はアジアとのコミュニケーションを前提に、今、直面している事態を乗り切っていかなければならないということです。 

 シンガポールのシンクタンク・ISEASが毎年興味深い調査をしていまして、究極の選択で、「米国か、中国か、どちらかに付かなければならなくなった場合、東南アジアはどちらに付くか?」という質問をしています。すると、2023年には中国が38.9%、米国が61.1%だったのに対し、2026年には中国が52.0%、米国が48.0%と逆転してしまったのです。 

 ASEANの中でも、特に日本にとって重要なインドネシア、マレーシア、タイ、シンガポールといった国々は、急速に米国に対する失望感を深めて、米国離れを起こしている。 

 なぜなら、インドネシアのイスラム人口は86.7%、マレーシアは70.1%もあって、トランプ米政権がガザやイランでやっていることに対して、ものすごく嫌悪と反発を感じているわけです。 

 ─ なるほど。それが米国離れを引き起こしている。 

 寺島 彼らは中国に対する警戒心も持っていますが、それでも米国よりは中国に付いた方がいいのではないか、と。 

 わたしが昨今、東南アジアの人たちと向き合ってきて感じるのは、そんな状態の米国との連帯感を深めて進もうとする日本に対する違和感です。日本に対して、ある種の失望とためらいがあると言ってもいいです。 

 企業の大小問わず、これから日本の産業はアジアのダイナミズムをいかに引き寄せて、日本の繁栄や経済の成長につなげていかなければならない。そういう状況下において、この実態はよく認識しておいた方がいいと思います。 

 ましてや、5月14日にはトランプ大統領が訪中します。日本人の中には、日米で連携して中国の脅威に向き合おうという考えが根強いのですが、そうした固定観念は突き破らなくはいけないということですね。 

 ─ 米国に依存しすぎてはいけないと。 

 寺島 そうです。今回の訪中でトランプ大統領は…

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