【 日本発の技術、ものづくりの力を結集!】  「日本はエネルギー自給国家になれる!」 ヘリカルフュージョンの〝核融合発電所〟づくり

ヘリカル方式を採用した理由

 

「日本はエネルギー資源を輸入に頼っており、地政学的に弱い立場にある。核融合が実現すれば、エネルギー自給国家になれる」─。こう強調するのは核融合の発電技術を開発するスタートアップのヘリカルフュージョン代表取締役CEO・田口昴哉氏だ。 

 高市早苗政権が「成長戦略17分野」の1つに位置付けたことで注目を浴びている核融合(フュージョン)。2025年度補正予算では核融合関連に約1000億円が計上され、そのうち約600億円を民間による核融合炉開発の支援などに充てる。 

 田口氏は「核融合は太陽の中で起こっている反応。恒星は全てこのフュージョンエネルギーによって輝きとエネルギーを放っている」と語った上で、「人類は今まで薪、石油、石炭、天然ガス、ウランといったエネルギーを使ってきたが、元を辿ると核融合のエネルギー。薪は太陽のエネルギーを吸収して育った木を切ったもの」と話す。 

    

田口昂哉・Helical Fusion代表取締役CEO

 この核融合による発電は約1億度という超高温かつ高密度の環境に水素同位体を閉じ込めることで生じる核融合反応で大きなエネルギーを発電に活用する次世代型の発電方式となる。重水素や三重水素の核融合は同じ質量の石油の燃焼と比べて、約1500万倍のエネルギーを創出すると言われている。 

 地球に人工の太陽をつくる─。田口氏はこう例える。これを実現させるためには、約1億度という超高温のプラズマを強力な磁場で閉じ込めなければならない。その方式には主にトカマク方式とヘリカル方式などがあるが、同社はヘリカル方式を採用。なぜなら同方式が日本で生まれた技術であり、「日本が守り抜いた世界唯一の武器」(同)になると見ているからだ。 

 現在主流のトカマク方式はプラズマ自体に巨大な電流を流して磁場をつくる。一方のヘリカル方式は最初から磁石自体を螺旋状に設置してプラズマを流す。前者はプラズマが不安定になりやすく制御が難しい。一方、後者は最初からカゴができているので、一度プラズマを流せば安定して維持できる。 

 ヘリカル方式を巡っては、約30年前に米国が実用化に向けて動いていたが、三次元の複雑な構造を工学的につくることができずに断念。しかし、日本では1989年に全国の大学の共同利用機関として設立された核融合科学研究所が研究を継続していた。ヘリカルフュージョンは同研究所からスピンアウトして2021年に設立されている。 

 そんなヘリカル方式に政府も予算をつけたのはエネルギー安全保障の観点だけではない。日本のものづくりの再興にも寄与できると期待されているからだ。田口氏は「コアコンポーネントは日本の産業の強みが発揮できる」と語る。核融合には発電装置のみならず、超電導、材料、精密加工、制御・ロボティクス、保守など様々な領域における技術が求められるからだ。 

 同社は30年代に商用発電所の実現を目指す。この「ヘリックス計画」では28年を目途にプラズマを発生しない予備実験を経て、30年前後にプラズマを伴う実証を予定する。同社は完成品をまとめるインテグレーターとして個々の技術や資金を持つ企業をパートナーに迎え入れる。

 

中小・ものづくり企業を束ねて

 

 最重要部品である高温超電導コイルを製造するための大型機械は産業機械メーカーのスギノマシンの協力を得て完成させるなど20以上と部品製造などで連携を進めている。また、プラント工事・販売のニチアスや繊維製造の長谷虎紡績、物流の鴻池運輸、商社の三谷産業などからは技術協力や出資を得ている。 

 例えば「断つ・保つ」の技術を中核とするニチアスは、液化天然ガス火力発電所の極低温領域や原子力発電所での気体の漏れや熱の移動を防いでいる。社長の亀津克己氏は「当社の断熱、シール、材料技術は極限環境でこそ価値を発揮する」と訴える。 

 また、「H3ロケット」や小型人工衛星打ち上げ用固体燃料ロケット「イプシロン」の噴射口には3000~4000度の高温に耐える特殊な繊維が使われているのだが、その繊維を提供しているのが長谷虎紡績。社長の長谷享治氏は「中小企業だからこそ、大手から優れた素材を調達し、独自の技術で加工できる」と意気込みを語る。 

 もちろん、事業費は巨額だ。田口氏によれば、直径30メートル級の巨大なプラントになる商用発電所の建設費は1兆円規模。それに対してヘリカルフュージョンの累計調達額はまだ100億円ほどだ。米国ではトカマク方式を採用するコモンウェルス・フュージョン・システムズは4000億円以上を調達している。 

 それでも愛知県で食品スーパーを展開するアオキスーパーとは将来的な核融合エネルギーの売買に関する契約を締結するなど、エネルギーの供給先の開拓も進む。冒頭の政府予算も民間向けの約600億円の所管が、それまでの文部科学省から経済産業省に移り、「単なる研究開発のフェーズから、国として社会実装・産業化へと舵を切ったという明確なメッセージだ」と田口氏は強調する。 

 そんな田口氏は京都大学文学部・大学院に進学し、みずほ銀行に就職。国際協力銀行に出向した後、コンサルティング会社などを経て、知人を介して核融合科学研究所の研究者と知己を得る。無資源国・日本を、エネルギー自給国家に変えられることができる上に、日本のものづくりを再興させる可能性もある核融合発電に関心を持った。 

 政府の援助も欠かせないプロジェクトであるだけに、田口氏の手腕が試されることになる。

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