太陽系の星々と地球の雲の世界を旅するイマーシブ(没入)型体験の2つの常設展示を、日本科学未来館(東京都江東区)が新たに公開した。宇宙船の窓に見立てた大型曲面スクリーンに映し出される個性的な星たちや、朝から夕方までの空の変化を、旅をするように体感できるのが特徴だ。未踏の世界や非日常空間の迫力が得られるようにしつつ、専門家の監修を得て科学の視点を重視したという。

木星衛星の間欠泉、眼前に

いずれも同館7階で、25日に開始した。太陽系展示のタイトルは「Voyage(ボヤージュ) 未踏のむこう」で、新たに設置した「シアタールーム」で公開。太陽や火星の素顔に迫るのに続き、巨大ガス惑星である木星の雲へと突入し、その想像の風景を示す。

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    「Voyage 未踏のむこう」の、エウロパの間欠泉のシーン=23日、東京都江東区

さらに木星の衛星の一つ、エウロパの地表に降り立つ。表面が氷で覆われ、地下には水の海が存在するとされる星だ。木星をバックに、この海から地表へと噴き出す間欠泉の様子を描いてみせる。このような地下海は土星の衛星エンケラドスなどにもあるとされ、生命が存在するかなどをめぐり、熱い関心が寄せられている。人類のメッセージを携え、太陽系の果てへと旅を続ける米国の探査機ボイジャーも紹介。最後に、宇宙だけでなく深海など、地球にも未踏の世界があることも感じ取れる展示となっている。音楽家の青葉市子さんがナレーションを担当した。

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    新展示は「その場にいる感覚」と語る渡部潤一さん

映像は15分。毎日上映(中止の場合あり)し、先着順で整理券を配付する。

監修した京都産業大学特別客員教授(同大神山宇宙科学研究所長)の渡部潤一さんは23日の会見で「さまざまな探査により、地球では見られない景色が手に取るように見えるようになった。それらを、宇宙旅行をしてその場にいる感覚で見てもらえる。没入型で、パソコンで見るのとは全く違う。(木星の雲とエウロパの間欠泉は)未踏の部分だが、今の知見と全く違う世界を描かないよう、映像チームと頑張った。特に子供さんの、科学への関心につながってくれるとよい」とアピールした。

雲との出合いは「一期一会」

雲の展示「Sky(スカイ) 雲の旅」は「イノベーションホール」で公開。壁と床のほぼ全面を使い、朝焼けから夕暮れまでの空や雲の現象を味わう。来館者は室内を自由に歩き回れる。こちらはナレーションがなく、体感をより重視した形だ。

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    「Sky 雲の旅」で積乱雲を体感。なお写真は報道対応時のもので、通常は口頭の解説はない

映像は朝、海上に起きる霧の様子で始まる。雲の隙間から美しい光が地上に差し込む「天使のはしご」と呼ばれる現象に続き、視点は上空の雲海へと移る。積乱雲の上端で強い上昇気流が対流圏を突破すると、金床(かなとこ)雲の上にも雲が現れる「オーバーシュート」が起こる。その中に入り込む疑似体験をする。

積乱雲の上の方では、雪や氷の結晶が雲を作っている。雪の結晶は一般によくイメージされる樹枝状結晶だけでなく、多彩な形に成長する。最新理論を基にこれらを表現した。積乱雲では、氷の粒「あられ」ができ、結晶とぶつかり合うなどして雷が起きる。雨になって雲の底を抜け、上空で円になった虹を見ながら、再び地上へと降り立つ。夕焼けと共に一日が終わる。

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    「何回でも楽しめる」と話す荒木健太郎さん

映像は5分。上映は土、日曜日と祝日(平日も上映の場合あり)で予約不要。霧を出す演出「特別インスタレーション(空間に入り歩くなどして変化を体験する展示様式)」が一日に複数回ある。

監修した雲研究者の荒木健太郎さん(気象庁気象研究所主任研究官)は「細かい描写がどんどん変化し、美しく科学的に非常に興味深い映像が流れる。(霧の演出がある時は)人の入り具合などによって見え方が変わり、実際の空と同じように一期一会の雲との出合いを楽しめる。雲(霧の演出)があり、風が出ることで本当に雲海の上を歩いているかのような体験ができる。雲が出ない時は床面(に映る現象)がしっかり見え、何回でも楽しめる」と魅力を訴えた。

浅川智恵子館長は「どちらも貸し出し端末やスマホのアプリによる日本語や英語の音声ガイド、字幕を用意している。(視覚に障害のある)私自身も体験したが、音響効果が素晴らしい。雲の旅では霧が出て、視覚だけでなく他の感覚も使って楽しめる。学校、団体向けに、今回の没入型インスタレーションの特徴を生かし、宇宙や気象に関し興味が深まるプログラムを開発予定だ」と説明した。なお同館は整備工事のため10月1日から全館休館し、来年4月23日に再開する。

新展示は体感を通して、エンタメと科学の関心が自然につながる仕掛けになっている。お台場に“映(ば)える”スポットがまた一つ、増えたようだ。

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    新展示の公開を始めた日本科学未来館