
「今、誰も経験したことのない相場が始まっている」─菅下氏はこう強調する。高市早苗政権が発足し、日経平均株価は初めて、5万円を突破した。支持率も日本経済新聞の調査では74%、若い世代に限れば80%を超えている。これを市場も好感した形だが、財政や安全保障、人口減など、日本には課題が山積している。こうした材料を踏まえて、菅下氏は2028年、29年にも日経平均〝8万円相場〟の到来もあり得ると予測する。
「波動」と「人物」に注目して相場を分析
─ 高市政権が発足前後から株価が上昇するなど市場の期待は高いようです。日本経済再生が問われますが、今後の株式市場をどう見通していますか。
菅下 様々なエコノミストやアナリストは、経済、株価がどうなるかについて、金融・経済の指数を判断基準にしていますが、私の判断基準は違います。
私もそれらのデータは見ていますが、データだけでは未来予測はできません。例えば、日本の大手証券会社は日経平均が4万9000円を付けてから、年末の株価見通しを4万9000円と出していました。
私が重視するのは相場の「波動」です。そして、それ以上に重視するのは「人物」です。世界経済や株式市場に最も大きな影響を与えているのはアメリカです。その意味でアメリカの大統領が誰で、どういう人物かを読むことが基本になります。
2期目の登場以来、多くのメディアでは批判一色ですが、私は、トランプ大統領は有能な大統領だと見ています。トップが有能であるかどうかは国にとって非常に重要です。
日本は「失われた30年」と言われた低迷期がありましたが、この間の国のトップが、状況を打開する手を打てなかったことが大きな要因だと言わざるを得ません。
2012年には安倍晋三首相が就任し、経済政策「アベノミクス」で株価が上昇し、企業業績も改善しました。これが契機となり今、日本はデフレを脱却しようとしています。
─ 高市首相の政策をどう見通しますか。
菅下 財政と国防の大転換です。財政は、これまでの日本の首相は「財政均衡型」でした。安倍元首相ですら、異次元の金融緩和は実行できたものの、機動的な財政出動については十分にはできず、構造改革もできませんでした。その課題にどう対応するかは問われます。
「空売り」勢の売りが株価を押し上げる
─ 防衛はどう見ますか。
菅下 憲法改正への道筋を付け、国防力を充実させるのではないかと見ています。今までは、国防力を充実しようと思うと、中国、韓国、国内の野党から「ファシズムの台頭だ」などと批判されましたが、高市首相はやり切るのではないかと思います。
「強い日本」を実現するために大事なのは財政と国防です。そのためにも財政政策の転換が必要です。つまり、必要ならば赤字国債の発行も行い、景気を刺激する。金融緩和と積極財政が柱になります。
このことを、すでに市場は好感して、株価は上昇しています。また、日本経済新聞の世論調査では、高市内閣の支持率は74%と高く、さらに言えば、18歳から39歳という若年層からの支持率は80%を超えています。若い世代からの期待が非常に高い。
─ 株価にもプラスだと。
菅下 すでに日経平均は初の5万円台を付けています。ただ、これだけ株価が上がると「ここが天井だ」と考える人が大勢出てきます。
日本で30年以上デフレが続き、株価、企業業績が低迷していたことから、「デフレマインド」が浸透してきたことが要因です。このデフレマインドを払拭しなければなりません。
日経平均は、この後5万円から5万5000円というゾーンに入っていきますが、その分、投資家の空売りも増えていきます。すでに18年ぶりという量の空売りが入っていますが、この人たちが今後踏み上がる(損を覚悟で買い戻す)ことになり、さらに株価は上がります。
同じことはアメリカの株式市場でも起きており、アメリカの空売りファンドの経営者が悲鳴を上げています。
─ トランプ大統領の政策は、全てインフレ政策ですね。
菅下 関税、不法移民の追放、大幅な減税、軍事増強などインフレ政策、需要喚起ばかりです。それに加えて、世界を取り巻く情勢は地政学リスクが高まり、「戦争経済」になっています。戦争経済は物資不足ですからインフレになります。
少なくとも、トランプ大統領の任期中は戦争経済でしょう。これで何か起きるかというと資産インフレです。もちろん、インフレが行き過ぎると経済が厳しい状況になり、政治的にももちませんから、日米政府ともに対策は取ると思います。
日本も、デフレ的政権が続いてきましたが、高市首相によるインフレ政権が誕生しました。そして何より、高市首相は一般家庭から徒手空拳で登り詰めた人です。これに若い世代は変化を感じて支持しているわけです。
─ 今後も株価は上昇すると見ますか。
菅下 いま始まっている相場は、前人未到の大相場です。株価は個別銘柄でも、目標を過去の高値に置きます。しかし、日経平均は過去の高値がありません。誰も経験したことがない相場が始まっているのです。
過去を見ると、戦後6回の大相場がありました。そのうち4回は、日経平均が出発点から5倍以上になっています。例えば、1980年代の日本のバブル相場の出発点は82年10月の6849円で、89年12月31日の3万8915円まで上げました。7年で5・6倍です。
それ以外は70年代に株価上昇の途中でオイルショックになって2・39倍の上昇にとどまった例と、安倍元首相の政治力が弱まって3倍弱で終わったアベノミクス相場の例がありました。
─ 今回の相場の出発点はどこになりますか。
菅下 20年3月のコロナショックの安値である1万6000円台です。ここから5倍となると8万円です。ただし、これはあくまで仮説です。もし、8万円になるなら、どんな材料が必要かというと、先程のトランプ大統領、高市首相によるインフレ政策の成功です。
日米の株価は史上最高値圏にあるわけですが、2つの動きが出てきます。1つは天井だと見ての空売り、もう1つはさらに利益を上げようという投資マネーで、今はそのせめぎ合いになっていますが、私は買い方が勝つのではないかと見ています。
─ 地政学を考えると、安全保障の充実も問われますね。
菅下 これまで安全保障、防衛の充実には与野党で反対の声が強かったわけですが、連立相手が自民党と政策が近い日本維新の会に変わったことで状況が変わりました。
これによって防衛の充実が図られることについて、欧米は歓迎しています。欧米民主主義国家とロシア、中国などの専制国家の対立という「新冷戦構造」の中で、日本の役割は重要だからです。
─ 人口減、少子高齢化は日本の大きな課題です。
菅下 まだ高市政権では具体的な政策は示されていませんが、成長戦略が進むことで若い世代の雇用環境がよくなり、結婚、出産をしやすくなります。
その意味で、今回の内閣の目玉人事は片山さつき・財務大臣と、小野田紀美・経済安全保障担当大臣ですが、特に小野田大臣の役割、訪日外国人との共生は重要になります。
今後注目されるセクターはどこか?
─ 日本政府が「資産運用立国」を掲げ、投資を始める人も増えました。
菅下 インフレが進むと通貨の価値が目減りしますから、そのことに日本人が気づき始めています。日本の個人金融資産は株式市場に向かい始めていますが、まだ始まったばかりです。そして今、金融庁が暗号資産(仮想通貨)を金融商品取引法で位置付けようという検討を進めています。
それに先駆けて、金融審議会(首相の諮問機関)の作業部会で、銀行が投資目的の暗号資産の取得・保有することを解禁する案が示されています。今後、日本で暗号資産ブームが訪れる可能性があります。
─ 日銀の利上げで「金利ある世界」が戻りましたが、このことが今後与える影響は?
菅下 「失われた30年」の中で、低迷してきたセクターは金融、不動産、建設です。
特に金融について言えば、今後さらに進むのがデジタル化、大衆の投資家化です。こうした動きを先取りしてきた代表例がSBIホールディングスです。傘下のSBI証券では日本株取引の手数料ゼロ化の他、暗号資産取引でも先行しそうです。
─ 高市政権下で他に有望視しているセクターは?
菅下 最も注目しているのが防衛関連です。資産運用立国では改革を進めた金融銘柄は上がる可能性があります。そして戦争経済の中では資源関連にも注目です。さらにインフレ下では消費関連も上がるでしょう。
加えてAI関連です。このセクターは米エヌビディアなど米国株を買う人が多いのがこれまででしたが、古河電気工業など電工関連でAIにつながる事業を行う会社の株も買われ始めています。
結論を言えば、前人未到の大相場の牽引役は三菱重工業に代表される防衛関連と、AI革命の先導者、ソフトバンクグループです。