リコーは11月5日、サプライチェーンマネジメントの最適化に向けた社内業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の一環として、需要と供給の調整を行う需給調整業務にAIを活用する実証実験を10月に開始したことを発表した。
実証実験では、これまで属人化しがちであった工場と販売部門間での調整業務におけるコミュニケーションを可視化し、LLM(Large Language Models:大規模言語モデル)やRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)といったAI技術を活用して業務品質の向上を目指す。2030年には現時点と比較して約3割の業務工数の削減を目指すとのことだ。
実証実験の背景
リコーは「デジタルサービスの会社への変革」を進めており、その一環として、プロセスDXを全社で推進している。プロセスDXは同社グループが社内で推進するDXの取り組みであり、プロセスの一部ではなく全体を可視化しデジタルとデータを活用して業務を変革することを指す。
顧客が必要とする商品とサービスパーツを世界各地へ届け、回収・再資源化まで含めたプロセスを統括するサプライチェーンマネジメント業務においても、業務全体のDXを進めている。
実証実験の取り組み内容
実証では、需給調整における本社・国内外の販売拠点・工場の間でのやり取りを、AIを搭載した自社開発のプラットフォーム上で実施する。これにより、これまでの担当者間で行われていたExcelやメールでのやり取りを一元化し、AIを活用して業務DXを推進する。
また、需給調整の精度を向上させるため、リコーが提供する複合機の市場での稼働状況に応じて、トナーや消耗部品などのサプライ需要を予測するAIシステムの開発にも着手しているという。さらに、急な需要変動など緊急時に発生する工場側との調整業務を支援するLLMを活用した仕組みを開発し、10月から社内で活用する。
同社はこれらの取り組みを通じて、業務工数の削減と品質の向上を目指すだけでなく、AIを活用したソリューションの社内実践で得たノウハウを顧客にも展開するとしている。