
政府は、映画やアニメといったコンテンツ産業の海外展開支援を本格化させる。9月19日に林芳正官房長官を議長とした関係閣僚会議を首相官邸で開き、施策パッケージを取りまとめた。映像作品の制作費に十分な資金を確保できるよう、複数年に渡って大規模な支援を行うことなどを盛り込み、今年度の補正予算や制度改正で対応する。
デジタルコンテンツ産業の海外売上高は、2023年には約5.8兆円に達し、半導体の輸出額を超えた。政府は33年に海外売上高を20兆円にする目標を掲げる。
こうした取り組みの背景として、IT分野で海外に多くを依存する「デジタル赤字」問題がある。生成AI(人工知能)が登場し、幅広い産業でデジタル化が進む中、日本の出遅れが続けば、成長するデジタル市場での存在感が低下する恐れがあるからだ。政府は、コンテンツ産業でデジタル赤字解消へのきっかけをつかむ考えだ。
政府関係者は「令和版の自動車産業だ」と成長に期待を寄せる。ただ、日本政府のコンテンツ産業支援に関する予算規模は現状で252億円にとどまる。
海外では官民連携が進んでおり、韓国では23年に海外展開支援などに約762億円の政府予算を計上。米国では、約6000億円規模の支援を展開し、映像産業の中心地ハリウッドを抱えるカリフォルニア州でも、多額の補助金や税制優遇を講じている。
政府は、支援拡大の一環として、経済産業省が展開する制作費3億円以上の大型映像作品に対し、2億円を上限とする補助金事業の強化を視野に入れる。
同補助金は、公開100日余りで興行収入が142億円を突破した映画『国宝』にも利用された実績があるが、予算が小規模で、補助を受けるのは「早い物勝ち状態」になっている。予算額や補助額の規模を増大させることで、支援が必要な制作会社が資金難に陥ることを防ぎ、海外展開を見据えた質の高いコンテンツ制作に繋げていく。
その他、アニメクリエイターの労働環境の整備も実施する。アニメ業界では、厳しい労働環境を背景に人手不足が顕在化し、年間制作本数も減少傾向にある。経済産業省が主導し、第三者機関の「アニ適(仮称)」を2028年度までに設置することで、労働条件などの指針策定や、条件を満たした作品を認証する仕組みなどを検討している。