元サントリーHD会長・新浪氏 経済同友会代表幹事も辞任

同友会内で意見が分裂 今後のしこりに?

「同友会でやりたいことはまだまだあった。悔しい気持ち」─。元サントリーホールディングス会長の新浪剛史氏(66)は、9月30日、都内ホテルで開かれた経済同友会の会見で、自らの思いを語った。

 新浪氏は海外からの輸入サプリメントを巡り警察の捜査を受け、9月1日付でサントリーHDの会長を辞任。9月3日時点で、同友会代表幹事としての処遇について、同友会の判断に委ねるとして活動を自粛していた。

 同友会は理事4人と監査役1人からなる会員倫理審査会を設置し、新浪氏の処遇を議論してきた。筆頭副代表幹事の岩井睦雄氏(日本たばこ産業会長)は月内を目途に処遇を決定することとしていたが、倫理委員会は、「代表幹事の辞任を求める勧告が相当」と結論づけた。

 30日の臨時理事会において、代表幹事を継続するか否かという議論の中で、論点となったのは経済団体代表としての資格要件と資質であり、事件の犯罪性は除き議論を重ねたという。

 現役の経営者でないという点や、これまでのグローバルでの実績やネットワークを持つ新浪氏が不在となる、発信力が落ちるということなど、同友会にとってプラス面とマイナス面を鑑みて議論が行われた。

 理事会での意見が大きく真っ二つに割れ、まとまらない状況を岩井氏から報告したところ、新浪氏は辞任を申し出た。

「同友会に大きな分裂が起こってしまう。これは日本にとって大変まずいことだと考えた」(新浪氏)。新たな代表幹事を選任するまで、岩井氏が代行する。

 新浪氏は政府の経済財政諮問会議の民間議員に関しては辞任せず、10月1日に開かれる会議は欠席。経済同友会には会員として残り、「勉強させていただくという気持ちで、自分ができることをやっていきたい」と話した。その新浪氏の下には複数社から経営者としてのオファーも来ているという。

 組織のガバナンスという点では辞任勧告まで1カ月を要した同友会の決断スピードは、十分だったとは言えない。何か起きた時のリーダーの引き際、トップの身の処し方とは何かを考えさせられる事案である。