
2019年を最後に国内で建造が途絶えた液化天然ガス(LNG)運搬船の建造再開に向けた議論が官民で加速している。国内最大手の今治造船(愛媛県)、川崎重工業、名村造船所の3社が協業し、建造を再開する見通し。造船業は、政府が成長戦略で重点投資対象に掲げる17分野の一つ。再開は、中国や韓国との競争に敗れて衰退する造船業再生の目玉になる期待が大きい。
議論の背景には、経済安全保障上、発電燃料や都市ガスに使うLNGを海外から輸送する船の国内建造体制の維持が不可欠だとの考えがある。
今治造船社長の檜垣幸人氏は7月23日の記者会見で「政府の要望に応えるよう前向きに検討中だ。複数社と議論している」と意欲を示した。同社は、世界市場で主流となっているLNG船の船型「メンブレン型」の建造実績を有する。
再開には大規模な設備投資が必要で、国交省は来年度での予算措置を目指す。すでに政府は35年までに国内造船の建造量を24年比で倍となる1800万総㌧に引き上げる目標を掲げ、1兆円規模の官民投資を実行すると表明。国交省は第1弾として昨年度補正予算で1200億円を獲得し、「造船業再生基金」を立ち上げた。
ただ、この段階でLNG運搬船の議論は主にコスト面で結論が出ず先送りとなっており、同基金ではLNG船の新造までまかなえない。政府が7月に策定した新たな成長戦略で同船の「国内建造再開」を明記。35年以降に年3~5隻を安定的に建造する体制構築を掲げたことを受け、国交省は関連予算として、来年度予算の概算要求で必要な金額を示さない「事項要求」として盛り込んだ。
国産LNG船は実現しても、中韓との価格差が大きい。そのため、経済産業省が発注サイドに対する支援を検討中だ。造船関係者は「現状LNG運搬船の隻数は不足していないが、中長期的な目線で考え、国内での建造体制を整備する必要がある」と訴えている。