【金融国際派の独り言】長門正貢・元日本郵政社長「経営者の休日、大事な息抜き」

政界でも経済界でも、一流の方々は本業に全知全能を注ぎ込んでいる。が、弦を常にきつく張りつめている弦楽器がないように、多忙なプロこそ気分転換が必須だ。皆さん(尊称略。かっこ内は所属組織)、どんな息抜きをしているのか。

 アイゼンハワー大統領はゴルフ。厳しい政局ではホワイトハウス執務室内でクラブをブンブン振っていた由。御手洗冨士夫氏(キヤノン)は週末、ホームコースを早朝一番目に1人で出て、3ボールを打ちながらカートに乗らず歩き切る。

 黒澤洋氏(日本興業銀行=興銀、現みずほ銀行)は「8時からの顧客との朝食会」の前、早朝6時からテニスをしてから多忙な1日を開始した。ヘンリー・クラビス氏(KKR)も海外出張時、従来はバーの一杯で疲れを癒したが、今はジムの一汗で時差調整している。

 当時最年長大統領だったレーガンが少し若く見えた一つの秘訣はホワイトハウスのジム通いだったとか。

 土光敏夫氏(東芝)の毎朝の木刀振りのように運動ファンが多いが、室内派も多い。池浦喜三郎氏(興銀)は寸暇を惜しんで読書を楽しんでいた。鈴木茂晴氏(大和証券グループ本社)や永野毅氏(東京海上ホールディングス)は仲間と組んで演奏会を主催される由。

 住吉弘人氏(コスモ石油)は夜遅く帰宅しても自宅アトリエに籠り油絵描きに没頭、疲れが一気に吹っ飛ぶそうだ。

 ウォーレン・バフェットと話した。『ブリッジがお好きだそうですね』。隣のビル・ゲイツを指さし『ビルも大好きなんだ。ダンスと同様、ゲームに勝つ為のパートナーとのやりとりが超・楽しい』。子供のような笑顔だった。

 細田博之氏(衆議院議長)も『こんなに楽しい知的なゲーム』と打ち込んでおられた。

 宮永俊一氏(三菱重工業)は毎朝、数学問題を解いてから出勤する。宇佐美洵氏(三菱銀行、日本銀行)は専ら麻雀。吉永泰之氏(SUBARU)は週末、いつも山荘籠りして自然と触れ合いリフレッシュしておられた。

 松平定信(江戸幕府)は文芸好みで、『源氏物語』の写本を何回もやった由。森鴎外や堤清二氏(セゾングループ)はそもそも本業二刀流でプロ作家でもあった。

 石油王・ジャン・ポール・ゲティは毎日1時間、誰とも会わず何も読まず図書館でじっと思索していた由。西洋風座禅ですよね。

 会社川柳「人事異動、俺の趣味がまた変わる」。そんな主体性のない生き方ではなく、本業で成果を上げている人ほど個性ある息抜き方法を持っているようだ。一層本業に邁進出来るよう、皆さんも自分ならではの休息時間を是非!