ispaceは10月2日、日本で開発が進められている新型月面ランダーの熱構造モデル(STM)を報道関係者向けに公開した。同社がこれまでに実施した2回のミッションで使われた「RESILIENCE」(レジリエンス)ランダーから大型化を進めたもので、「シリーズ3」ランダー(仮称)と呼ばれている。2028年に打ち上げるミッション4で初飛行が行われる予定だ。
シリーズ3ランダーの大きさは、高さが約3.6m、横幅が約3.3m。RESILIENCEは高さ約2.3m、横幅約2.6mで、どちらも着陸脚を含めたサイズなので少し分かりにくいのだが、本体部分は2倍ほど大きくなったような印象を受ける。重量は約1トン(ドライ)/約3.5トン(ウェット)に増え、ペイロードは最大数100kgと大幅に向上する。
シリーズ3ランダーは、2023年より開発を開始。今回公開されたSTMは、フルスケールの試験モデルとして開発され、振動試験、音響試験、熱真空試験といった環境試験が完了したという。同社の氏家亮CTOによれば、環境試験では特に大きな問題は見つからなかったとのことで、さらに軽量化できる可能性もあると期待を述べた。
RESILIENCEは主構造にCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を採用するなど斬新な設計だったが、シリーズ3ランダーは主にアルミを使用。CFRPは太陽電池パネルの裏側など、単純な形状のところのみに適用されており、使用率は減っているという。これは、RESILIENCEでの知見を反映させ、リードタイムと軽量化のバランスを取った結果ということだ。
今回、STMによる環境試験が無事完了したことで、開発は次の段階へ移行。今回の成果をフィードバックして開発する構造認定試験モデルで再度環境試験を行ってから、本番機であるフライトモデル(FM)を製造する予定だ。なお、初飛行は当初、2027年と発表されていたが、今回、1年遅れて2028年になる見通しであることも明らかにされた。
また今回、ミッション4のペイロードとして、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙戦略基金による「月面の水資源探査技術(センシング技術)の開発・実証」を搭載することが発表された。「テラヘルツ波リモートセンシング衛星による月地下浅部の資源探査」という研究開発課題で、ispaceが衛星開発など中核的役割を担うという。
着陸地点はまだ決まっていないものの、氏家CTOからは、「南半球の高緯度地方を想定している」という言及があった。なおソフトウェアについては、ミッション1および2では月周回までがispace、着陸は米ドレイパー研究所という分担だったが、シリーズ3ランダーはすべてispace側の担当になるということだ。
打ち上げロケットも未定。ただ、シリーズ3ランダーの開発には、経済産業省のSBIR制度による補助金120億円が使われており、その中には「我が国の基幹ロケットを用いることが推奨される」という記述がある。H3ロケットにより、日本から打ち上げられる可能性が高いと考えられ、それも期待したいところだ。










