《 日本発GAFAM級企業を目指す! ≫ ジーニー社長・工藤智昭の〝世界への挑戦〟

日本でGoogleのような 会社をつくりたいと思い起業

 ─ 御社は広告プラットフォーム事業やAI事業、マーケティングなど幅広くサービスを展開していますが、まずは起業のきっかけを聞かせてください。

 工藤 元々は学生時代にコンピューターやITを勉強していて、研究室にGoogle社を研究していた同期がいたんです。わたし自身もそういう検索エンジンやアルゴリズムを研究していました。Googleはアルゴリズム1つで世界を変えていき、世界的な企業になっていくのを学生時代に目の当たりにしたんですね。なぜ日本からああいう会社が生まれないんだろうという疑問を抱いて、自分がそこに挑戦していこうと起業しました。

 ─ ジーニーという社名の由来は何ですか。

 工藤 ジーニーの社名には、「genie(願いを叶える魔法の精/魔人)」と「genius(独創的な人)」の2つの想いが込められています。

 元々のITもそうでしたが、AIがいま進化してきていてもはや人間とそんなに変わらなくなってきました。人間を超えたともいわれていますし、魔法のようなことが、現実に次々と実現していますよね。この力を使って社会課題を解決していきたいと考えています。

 ─ そういう思いを持って起業してみて、改めてなぜ日本でGAFAM級企業が生まれないのだと思いますか。

 工藤 1つ思うのは、GAFAMは世界から資金を集めて世界を相手に戦っています。同じビジネスをしていたとしても、10倍の企業価値や売上があると思うんですよね。ですからマーケットとそこに集まる資金の規模感、人材のレベルが全く違うと思いました。大きなことをやるには優秀な人材が必要です。日本人社員だけで経営していく時代はいずれ終わるとわたしは思っています。

 ─ ジーニーでも多国籍人材の採用は進めていますか。

 工藤 はい。グループ会社のJAPANAIだと、エンジニアの半分以上は外国籍の方です。アメリカ、中国、台湾、インドネシアなど出身はさまざまです。特にインドの方々は理工系の優秀な人が多いです。インド国民の14億人のうちトップの人材は、日本の1億人のトップ層と比較しても、やはり凄いなという方がいます。向こうはまだまだ国自体が豊かになっていないのでハングリー精神が強く、人生に対する目的意識が高いと思います。

 ─ 言語、民族、宗教など複雑なところがありますね。

 工藤 そうですね。あと、インドは1つの国とみんな思いがちですがアメリカのように州ごとに全然違います。非常に多様であり複雑性が高いです。

 ─ 同業他社と比較しジーニーグループの強さはなんですか。

 工藤 1つはAIの精度です。日本の会社はデータが散らばっていて業務フローが非常に複雑です。日本人は平均的に優秀なので、アメリカと違って整理されたマニュアルが少ないんですね。その状態でもできてしまうのです。そういった日本の環境に合わせてAIを活用するソフトウェアの開発を行っています。対してアメリカは本当にマニュアルや業務手順書が多く用意されています。

 ─ アメリカという市場を、どう見ていますか。

 工藤 アメリカのビジネスも広げようとしています。われわれがやっているSSP(Supply Side Platform=インプレッションに基づいて、ウェブサイトやアプリ上の広告スペースの販売促進をサポートするために使用されるテクノロジー)というのは非常に小さいジャンルで、広告業界の小さい市場ですから、そこでは1位になれる可能性はあると思っています。

 ─ シンガポール、ベトナム、インドなどアジアも積極進出していますね。

 工藤 はい。現地採用で200名を超える社員が働いてくれています。広告事業で海外展開も不可能ではないなということがわかってきました。あるビジネスが東京から文化の違いがある沖縄に進出するようなものだと。言語の違いもありますが、結局はその国のマーケットにどういう競合がいて、自分たちのプロダクトが役に立ってるかどうかが勝負だと考えています。

 いまGoogleの基幹事業で海外進出しているサービスのパートナーとしてわれわれは全世界の取引額で世界上位まで来ましたので、これを世界一に持っていくのが次のビジョンです。

 ─ 見通しはどうですか。

 工藤 すぐには難しいですが2030年までにはやり遂げたいと思います。そのためには、インドネシア、インドなど成長が著しいところで勝っていくのも当たり前ですが、アメリカでちゃんと市場シェアを獲れるかが大事だと考えています。

 まだまだ国内でも小さい会社ですから、まずは日本の一流会社になっていくということが目標です。日本もまだまだ成長の余地は非常にあります。

 ─ メインターゲットは?

 工藤 いまは中小企業が非常に多く、8割~9割を占めていますが、いずれはあらゆる企業をターゲットにしていきます。

 われわれの仕事のレベルも上がってきていて、最近は大企業との取引が増えてきています。

 ─ 中小企業の生産性向上は全産業界での課題ですが、そこに対し需要の掘り起こしは?

 工藤 AIを活用していけば生産性は一気に上げられると思っています。取引先の会社で人を増やさず、当社のAIをフル活用していただき売上が50%伸びたという事例もあります。

当事者意識を叩きこまれた リクルート時代

 ─ 創業前の4年間のリクルート時代の教訓は何ですか。

 工藤 1つは圧倒的な当事者意識と経営者が持つべきプロフェッショナリティというのを、リクルートの役員の方、数名から教わる機会がありました。いま思えばこれが自分の最大の財産になったと思っています。

 ─ 当時社長は峰岸真澄(現会長)さんの頃ですね。どんな仕事をしていたんですか。

 工藤 新規事業の開発をしていました。その中で峰岸さんや役員へのレビュー会議みたいものがあり、プロジェクトの進捗報告をし、アドバイスや意見をもらうというのを隔週で行っていました。そこで峰岸さんにも、たくさんのことを教わることができました。このときの経験は非常に勉強になりましたね。

  特に、リクルートとNTTドコモの全社的な提携プロジェクトを、わたしがフロントに立って成立させたことがあります。ドコモの、当時iモードの中にリクルートが運営するコーナーを作り、900万人のユーザーを呼び込むことができました。その仕事で全社イノベーション賞を獲れたのは良い思い出です。

 ─ 最後にAIと人間の関係について工藤さんの認識を聞かせてくれませんか。

 工藤 AIを持つことで、社会やそして個人の人間はより良くなると思います。最近、最終面接をした社員は、業務でAIを使いこなしていろいろなアドバイスももらっていたと。それにより、自分のプロジェクトが成功していったという話をしていました。日本は中小企業が支えていますが、リソースや知見や人材が不足している会社でも、AIでより活躍し、輝いていける世の中になってくると思います。

 ─ 一方で課題は。

 工藤 AIを活用していると自分で考えなくなるということは一般的に言われていると思います。しかし、馬の時代から車の時代に移行したときにも、足腰が弱くなるから車を止めるという声もあったと思いますが、結果的にはいま車社会になり浸透していますよね。ですから、新しい世代がどう使っているのかをよく見ることが重要だと思います。

 AIなどの新しいテクノロジーが生まれて、20代などの若者も就職の相談や今日どの服を着て行くとか、人生のいろんな相談をAIにして使いこなしています。もちろん新しいテクノロジーなので、車と同様に事故を起こすなど問題を抱えていますが、基本的には良いものであると思います。

 ─ 工藤さんが起業して15年経ちましたが、一番嬉しかったことはなんですか。

 工藤 ジーニーやAI事業を立ち上げて取引先の業績を改善できるときなどはやはり嬉しいです。それから、ジーニーは人が成長する会社です。リクルートもそうですが、働く人が急成長したり、急激にキャリアを積んでいる人が相対的に多いのはみていて嬉しいですね。

 ─ 伸びてる人材はどういったタイプの人ですか。

 工藤 ジーニーは「誰もがマーケティングで成功できる世界を創る」「日本発の世界的なテクノロジー企業となり、日本とアジアに貢献する」というパーパスと、9つのバリューがあって、ここには一流のビジネスマンになって欲しいという願いが込められています。伸びているのはこれらを体現している人です。

  一番大事にしているのは当事者意識です。自分が伸びていなかったらその現実を直視して、改善できるように考えて行動しろということです。そういう一流のビジネスマンの心構えがバリューに入っています。