
「ベンチャーにとってAIで環境が大きく変わろうとしている」─。こう語るのは、起業家や中小企業の成長を支える東京ニュービジネス協議会(東京NBC)会長で、Ubicomホールディングス社長の青木正之氏。先の総選挙で大勝した高市早苗首相の政策とどう歩みを共にするのか。また、Ubicomでは全国の医療機関の約7割が赤字となる中、同社の医療機関向け経営支援ソフトで、どのように医療機関の経営を下支えしていくのか。
高市政権への期待と東京NBCの方向性
─ 「自民党一強」と言われる中、東京NBCの会長でもある青木さんから見た高市政権への期待を聞かせてください。
青木 岸田文雄前総理が打ち出した「スタートアップ育成5カ年計画」を高市総理も踏襲されており、先の施政方針演説でも「スタートアップは技術を実用化していく主要な担い手」とおっしゃっています。その意味では、我々が進めている方向性と、まさに合致しています。
というのも、東京NBCはフラッグシップイベント「起業から成功への道」第3回を今年3月6日に開催しました。今回のテーマは『「革新」~挑戦の先にある未来~』でした。高市総理が実行しようとされている取り組みも、まさに革新です。
イベント当日はロッテホールディングス代表取締役CEOの玉塚元一さんにこのテーマで基調講演をしていただき、その後のパネルディスカッションでは、SHONAI代表取締役の山中大介さん、栄農人社長の柳澤孝一さん、Unito代表取締役の近藤佑太朗さんが登壇したほか、東京NBCの上場オーナー経営者陣として、MS︱Japan会長CEOの有本隆浩さん、ティーケーピー社長の河野貴輝さん、識学社長の安藤広大さん、そして私も登壇し、日本経済の革新について語り合いました。
3月6日に開催された東京NBC主催のフラッグシップイベント「起業から成功への道」第3回。今回のテーマは『「革新」~挑戦の先にある未来~』で、ロッテホールディングス代表取締役CEOの玉塚元一氏が基調講演し(右)、青木氏も講演を行った(左)
─ 日本再生に向けたキーワードとして革新が挙げられるということになりますね。
青木 ええ。パネルディスカッションのテーマは「世界で勝てる企業を生む」でしたが、上場オーナー経営者の意思決定はどのように行われているのかといった話を中心に、熱のこもった討論が繰り広げられました。
企業にとっての「改革」は我々、東京NBCのテーマでもあり、革新を物語として打ち出していこうと。
具体的な事例としては、昨年末に韓国の韓国経営革新中小企業協会(MAINBiz協会)と、日韓の中小企業・スタートアップの新規事業創造やビジネスマッチング強化などを目指すためのMOU(覚書)を締結し、まさに革新に向けた新しい動きが始まろうとしています。
─ 国境を越えた提携が始まったわけですね。
青木 そうですね。AIで環境が大きく変わろうとしています。今まで人がやってきたサービスや労務の提供、あるいはエンジニア技術の提供などがAIの登場で、人を介す必要がなくなってきます。ただし、ものづくりなどでもそうですが、最終的には品質などをチェックする領域は人でないと難しい。
それではビジネスモデルをAIがゼロから考え出すことができるのかどうか。そうなれば嬉しいですけど、これもなかなか難しいでしょう。
日本企業のあるべき姿を
─ AIなどの技術革新で環境が激変する中、東京NBCの役割はどうなりますか。
青木 若いベンチャーにとっては会社の成長が大事ですから、東京NBCが間に入ってベンチャーを育成する指南役を紹介したり、M&Aの買い手・売り手を紹介したりもします。
事業承継問題でお困りの経営者もいらっしゃいますから、そのマッチングもします。アライアンス(提携)も同様です。これらのニーズを革新というテーマで進めていくことが、今回のイベントのテーマでもありました。
高市総理は「これからの日本を変えていく」とよくおっしゃいます。そのためには税制の問題もありますし、思い切った資本政策も必要になるでしょう。そのときには、我々民間も中小企業を含めて同じ方向に足並みをそろえていかなければなりません。
そのためには、まずは、日本企業があるべき姿をもう一度、原点から見直して革新していくことが大事になります。
─ 国や行政とも歩調を合わせていくわけですか。
青木 はい。東京NBCとしては、東京都に対してベンチャーやスタートアップなどの企業への助成金や教育に関しての要望を提案しています。企業がもっとチャレンジできるような環境整備などもお願いし、それに対し小池百合子知事からもご了解をいただき、来年度の予算にも計上いただきました。
また、政府に対しては、我々も国の方向性を理解し、ベンチャー育成に、さらに力を注いでいきたいと。後輩たちにもしっかりメッセージを出して併走していきたいと思っています。
─ そもそも先の衆院選で自民党が圧勝したことを青木さんはどう分析していますか。
青木 3つあると思います。1つ目は明確なメッセージをしっかり出されたということ。2つ目はコミットメントの仕方がすごく分かりやすい。3つ目は高市総理自身が物事をしっかり勉強されていることが伝わったと。それによって総理の言葉が響いたのではないでしょうか。
庶民に寄り添いながら、明確なメッセージを出してコミットメントしていかれている。それが票につながったのではないでしょうか。さらに言えば、若い世代からの票もあったようですので、若い人から今の閉塞感を打破して欲しいという思いもあったのでしょうね。
─ 分かりやすいと。
青木 ええ。それから若い人たちが抱くチャレンジしていきたいという気持ちに対して応えていると。今のところは政府も同じ方向を向いているように見えます。これは初めてのことではないでしょうか。
ただ、そこにテクノロジーのAIが被ってきています。ですから、まさしく革新というものが目の前に来ているということなのです。
─ その高市政権では食料品の消費税を2年間ゼロにするという政策が検討されています。一部では「ばら撒きではないか」という声もあります。
青木 消費税のあり方については、本当に財政の問題とのバランスを取らなければなりません。もちろん、総理もそこを考えた上での発言だと思います。少子高齢化で高齢者が増えてくるときのサポートをどうするか。そういった財源も考えなければなりません。
また、当社はメディカル関連の事業を行っていますが、やはり医療従事者の人手不足で、医療現場は逼迫しています。クリニックほどではありませんが、中小病院のほとんどは赤字です。
当社は、経費削減に大いに貢献するようなシステムを開発・提供することで、医療機関が直面している課題解決に貢献できると考えています。積極財政といっても、しっかり市場を見据えながら政策を実行して欲しいと思います。
人手不足で逼迫する医療業界
─ Ubicomホールディングスのメディカル事業のユーザー数はどのくらいですか。
青木 全国に約2万2000のユーザーがおり、約8000ある病院のうちの約49%が当社のお客様になっていただいています。診療所も全国で約10・5万ありますが、そのうちの約18%が当社のお客様です。両方とも今後は増やしていきたいと思っています。
当社のメディカル事業のビジネスモデルは、AI×サブスクモデルを活用した医療機関向け経営支援ソリューション「Mighty」シリーズによるリカーリングモデル(製品やサービスを一度販売して終わりではなく、販売後も顧客と継続的な関係を築いて繰り返し収益を上げ続けるビジネスモデル)です。
また、「Mighty」シリーズの継続率は99・6%と高水準で、製品が高く評価されていますので、さらにより良い商品をクロスセル(既に購入した商品に関連する別の商品を提案し、一緒に購入してもらう販売手法)して経費を下げていただくことに活用していただいています。
そして、医療DXの推進をサポートしていくというスタンスで広げていきます。
─ 病院の経営に対するコンサルティング的な要素もあると。
青木 はい。電子カルテメーカー様とも連携し、当社の電子カルテ連携システムを組み込んで、販売いただいているケースもあります。国は2030年までに全国の医療機関への電子カルテ普及を力強く推進しています。
当社にとっては追い風にはなりますが、それ以上に人手不足で困っている医療機関を何とかサポートしていきたいと考えています。
─ メディカル事業の売上高は全体のどのくらいですか。
青木 売り上げの3分の1くらいですね。ただ、利益率は高くて約63%です。年間、約1000の医療機関が新規顧客となっています。医療機関様への直接販売の他、先ほどの電子カルテ連携システムを組み込んでいたり、全国にある販売代理店の力も大きいですね。
フィリピンのエンジニアの強みと可能性とは?
─ 社会保障にも貢献しているということになりますね。
青木 当社はフィリピンでオフショア開発を行っているのですが、現在AIエンジニアの教育を推進しています。
特に、フィリピン人は英語が話せますから、日本市場向けにコンバージョン(変換)したプロンプトマネジメント(AIから期待する回答や成果を得るために、AIへの指示や質問を効果的に作成・管理する手法)に関するエンジニア育成を強化しています。
当社には若く優秀なエンジニアがグループで900名以上いますので、その人材を基盤にチームを編成し、日本の顧客ニーズに適合した製品開発を推進しています。
─ フィリピンの拠点は、どのくらいあるのですか。
青木 マニラとセブ島の2拠点です。フィリピンは英語圏であり、国の平均年齢も非常に若い。二十数年前に私がM&Aしたときは約22歳。今も約24・5歳です。それだけ若い人が増えているから平均年齢も大きく上がらずに済んでいるのです。
さらにフィリピンは内需が活況になってきているので、中産階級が増えて教育にお金をかけられるようになってきています。アメリカで勉強して帰国する人も多い。その意味でも、当社の貴重な戦力になっています。
─ 今後の方向性は?
青木 メディカル事業は収益性の最大化に向けた、M&A戦略によるグループ直販モデルを推進し、テクノロジーコンサルティング事業はAI駆動開発モデルへの転換による、AI人材(プロンプトエンジニア等)の育成やAI活用能力の高度化を推進することで、高付加価値・高利益型のビジネスモデルへの転換を進めていきます。
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