NECは6月18日、中外製薬と共同で、がん疾患に対する治療効果を高める薬剤の組み合わせについて、AIを活用して予測する実証実験を2024年12月から2025年3月にかけて実施したことを発表した。
その結果、中外製薬における従来の検索方法と比較して、作業時間を約50%短縮する可能性が示されたという。
実証の背景
がん治療の選択肢の一つに、2種類以上の薬剤を組み合わせて使用する薬剤併用療法がある。薬剤併用療法は、単剤投与時と比べて高い治療効果が期待される一方、これまで薬剤の組み合わせを予測するためには、膨大な論文や臨床試験データなどをもとに、薬剤の組み合わせ実績や関連する疾患、作用機序、適応症などの情報を手作業で調査・分析する必要があり、多大な時間を要することが課題とされていた。
今回NECは、臨床試験データベースAACTや生化学データベースChEMBLで公開されているがんや薬剤に関する膨大な情報を、自社が有する独自のグラフベースのAI技術に学習させ、治療効果を高める薬剤の組み合わせを予測するシステムを構築した。
実証実験の概要
NECは医療データの利活用事業を展開しているが、医療現場で生成されるデータや個人の健康情報などを安全に連携し、医療の質の向上と人々の健康増進を目指している。今回の実証実験はその取り組みの一環となる。
今回開発されたシステムにがん治療に投与する対象薬剤名を入力することで、対象薬剤の有効性を高めるための組み合わせ候補を迅速に提示する。また、組み合わせ候補の予測根拠も提示することで、予測結果の理解や妥当性検証を補助することが可能となる。
実証実験では、同システムで予測した薬剤の組み合わせの臨床適用可能性を確認するために、臨床試験データベースから約400組のがん治療薬の組み合わせ情報をランダムに抽出した。
抽出した薬剤の組み合わせ情報のうち、片方の薬剤情報を同システムに入力し、併用療法によってがん治療の効果が高められる薬剤として、もう一方の治療薬を予測できるかを評価した。
実証実験の結果
同システムが提示した薬剤の組み合わせ候補予測の精度は事前に規定した基準を越えており、また予測根拠の納得性が高いことを確認。その結果、薬剤の組み合わせ予測に要する作業時間を約50%短縮できる可能性があることを確認したという。
これらの成果から、同システムを用いることで、研究者が効率的かつ迅速に薬剤の組み合わせ候補を発見することを支援し、データに基づく薬剤の組み合わせ候補の予測に貢献できる可能性が示された。NECは今回の実証実験の成果をもとに、ソリューションの開発と実用化を進める。