紙の稟議書で生じていた課題の解消に着手
明治26年、名古屋で様々な産業が起こる中、地元経済界の要請を受け倉庫業を開始、創業から数えると130年以上の歴史を有し、2026年3月に設立100周年の節目を迎えた東陽倉庫。次の100年に向けた新たなスタートを切っている。日用品や食品などの消費財から原材料や工業製品まで幅広く取り扱い、国内物流だけでなく国際物流も展開。さらに、保有する資産を活用した不動産事業も展開。中部地方の社会インフラを支える存在となっている。物流拠点は愛知県内だけでなく関東・関西へと広がり、さらに米国、中国、タイにも展開している。
稟議の起案、作成、決裁、回覧といった業務を、押印を前提とした運用から電子化する方針とした、と総務部でこのシステムの導入・運用を担う奥田武司氏は説明する。
「従来、社内稟申は、稟議書を紙に出力し、押印による決裁、承認、回覧を経た後、原本を総務部が保管し、起案者は控えを保管していました。しかし、この方法では稟議書が回覧を経て決裁者のもとに届くまでに時間がかかります。以前、私が東京で勤務していた時、まず初めに直属の上司の決裁を受け、その後、本社(名古屋市)に郵送。決裁印が押された稟議書が手元に戻るまで、1週間以上の時間を要することもあり、もどかしく感じました」(奥田氏)
さらに、「紙の稟議書は、回覧中は進捗状況を確認できないという課題もあった。加えて、起案内容によって、総務部以外の部門が管理することがあり、過去の稟議書を見つけるのに一苦労することもあった」と奥田氏は振り返る。
ネクストセット・ワークフローが稟議の標準ツールに
当時、本社総務担当がこうした事態に問題意識を持ち、システム会社に相談したところ、ソリューションとして提示されたのが、ネクストセットの「ネクストセット・ワークフロー for Microsoft 365」(以下、ネクストセット・ワークフロー)だった。奥田氏は、当時の担当者から、紙の稟議書に関する課題の解消に向けた有効な提案と評価していたと聞いている。
導入はスムーズに決定し、2019年4月の本稼働に向けて2018年12月にプロジェクトをキックオフ。構築・テスト・検証を経て、2019年春に本稼働へと移行した。
「ネクストセット・ワークフローの導入において、特に大きなトラブルなく構築できたと聞いています。本稼働前の約2カ月をテスト期間にあてました。その間に、承認ルートの修正やアドオン導入に関する社内周知を行うなど、やや苦労もあったようです」(奥田氏)
承認ルートの構築では、ネクストセット・ワークフローに決裁者を登録しつつ、稟議フローが適切に機能するかどうかの検証に時間を要したという。「実際に試用した結果、レイアウトについてはより扱いやすいよう見直しを行ったと聞いています」と、当時の担当者の言葉を紹介する。
一方、社内周知は、当時の担当者が各拠点に足を運び、説明会を実施した。
「それまで紙で行っていた業務を、新たに導入したネクストセット・ワークフローに移行するため、説明会で操作方法を詳しく解説するとともに、質疑応答の時間も設けました。また、電子化によって外出先からでも承認が可能になるといったメリットも紹介していました。当時、私はユーザーの立場でしたが、説明を聞き、稟議プロセスが大きく変わり利便性も高まるだろうと感じたことを覚えています。質疑応答でも、社員から大きな異論が出た記憶はありません」(奥田氏)
全部署への周知は、テスト期間を含め約1年を要したが、その後、社内で“当たり前の存在”として定着しているという。
ユーザーの利便性が向上した一方で、運用を担う総務部では、社員の異動に伴う設定変更や、不具合発生時の対応などが必要となる。ただ、こうした対応についてはシステム会社に都度依頼するのではなく、担当者自らがツールの知識を習得し、対応を行っている。
「運用において、導入当初こそ操作に不慣れな点もあったようですが、ベースとなるシステムが完成していることもあり、設定作業にもほどなく対応できるようになったと聞いています。私が担当になってからも、承認ルートの修正や人事異動に伴うフローを見直し、現在の形へと整えてきました」(奥田氏)
1週間を要していた決裁・承認のリードタイムを大幅短縮
紙の稟議書をネクストセット・ワークフローへ移行したことで、さまざまなメリットが生まれている。
「過去の稟議書をすべてPDF化して保存できる点や、データを容易に再利用できる点、履歴が残る点など、電子化のメリットは大きいと感じています。実際、稟議プロセスにおける利便性とスピード、書類の管理・検索は大きく改善され、業務効率の向上につながっています。かつては1週間前後を要していた拠点間の決裁も、現在では1~2日で進むようになっています」(奥田氏)
東陽倉庫では、奥田氏が中心となって改良を重ね、より使いやすいシステムへと整備されていった。また、2024年には関連会社の東陽物流にも展開した。東陽物流では稟議プロセスに加え、社内報告書もネクストセット・ワークフローを活用して構築したという。
「当初は慣習や東陽物流独自の企業文化の影響もあり、ネクストセット・ワークフローの導入に至るまでには時間を要しましたが、いざ運用が始まると、ITに強い同社の担当者が主体的にシステム構築を進めました。私は導入前にマニュアルを渡し、数回説明を行った程度で、その後は東陽物流の担当者が独自に構築・設定を進めました。」(奥田氏)
現在は東陽倉庫、東陽物流の両社ともに、運用管理において大きな問題は発生していないという。
「一方で、管理者が画面設定を行う際に申請者側の状態を把握しづらい点や、同一人物が複数の決裁権限(部長と本部長など)を兼務する場合に承認を一度で完了させる設定が難しい点、データ保存期間に制限がある点など、仕様上留意すべき点もあります。それらを踏まえても、運用自体は大きな負担なく行えています。改良を重ねることで使いやすさが向上していく点や、その見直しを比較的容易に行える点も、本ソリューションの利点だと感じています」(奥田氏)
今後は稟議以外の紙業務の電子化にも意欲
同社の稟議プロセスに“当たり前の存在”として浸透したネクストセット・ワークフロー。紙による運用と比べて大幅にスピードアップし、その効果が定着している。一方で奥田氏は、利便性の向上がもたらした新たな課題にも言及する。
「ネクストセット・ワークフローによって手続きが容易になり、社内の情報共有・回覧として利用されてしまう場面も見られます。今後は運用ルールをより整備していく必要があると考えています。利便性向上の副次的な影響とも言えますが、それだけ稟議プロセスがスムーズに機能している証でもあり、ある意味で“贅沢な悩み”でもあります」(奥田氏)
そういった“悩み”も浮上した一方、今後はワークフローにとどまらず、ネクストセットのM365アドオンを活用し、他の申請業務の電子化も進めていきたい考えだという。奥田氏は、導入を検討する企業に向けて次のように話す。
「ネクストセットには、“こうしたい”という要望に応じたアドオンが豊富に用意されています。まずは費用対効果を踏まえて検証し、紙中心の業務からの脱却や業務改善といった目的を明確にできている企業にとっては、有効な選択肢になると思います。マニュアルも整備されており、ITにそれほど詳しくない担当者でも運用しやすい点も特長です。関心があれば、一度検討してみることをお勧めします」(奥田氏)
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