6月11日から13日まで、幕張メッセで開催されたインターネットテクノロジーにまつわる展示会「Interop Tokyo 2025」。同展示会では、ネットワークインフラや生成AI、セキュリティなど幅広いテーマで講演、セミナー、展示が行われた。

本稿では、同展示会で行われたKDDIによるセミナー「KDDIの5GxAI“つなぐチカラの進化"」の内容を紹介する。

セミナーにはKDDI 執行役員先端技術統括本部長兼先端技術企画本部長の藤井彰人氏が登壇。生成AIが加速させる社会変革の中、通信とデータで「未来」を支えるKDDIの挑戦について紹介した。

  • Interop Tokyo 2025

    Interop Tokyo 2025

AIによって失業率が10~20%に急上昇する可能性も

最初に藤井氏は、現代は「AIが社会を変えていく時代」であることを述べた上で、AIの能力が7カ月で2倍のスピードで進化しており、2027年初頭に超人的なプログラマーが登場するとの予測を示した。

また藤井氏曰く、最近は若者を中心に情報収集チャネルがAI経由に変化しているそうで、デジタル広告の54%がAI経由になるとも予測されているという。

「OpenAI CEOのサムアルトマン氏によると、『20歳前後の利用者がChatGPTを“OSのように”設定し、ファイル接続や複雑なプロンプトを駆使して生活全般を委ねている』そうです」(藤井氏)

  • AIのトレンドを説明する藤井氏

    AIのトレンドを説明する藤井氏

さらに注目すべきは、「AIによってホワイトカラーの初級職の半分が消え、今後1~5年で失業率が10~20%に急上昇する可能性がある」と、Anthropic CEOのアモディ氏が述べた点だ。

藤井氏は、今後のAIのトレンドとして「労働力としてのAIと組織の在り方」について大きな変化が起きることを予想してみせた。

  • 出典:EY「社員とAI どちらをより早くスキルアップさせるのか?」

    出典:EY「社員とAI どちらをより早くスキルアップさせるのか?」

KDDIの「つなぐ」取り組み

このようなAI時代において、KDDIでは次の成長に向けて、各事業ドメインへの適用を通じてポートフォリオを強化する「デジタルデータ×AIによる新たな価値創出」、土台となる通信ネットワークをKDDIの強固な競争基盤にしていく「つなぐチカラの進化」に取り組んでいくという。

  • KDDIの取り組みイメージ

    KDDIの取り組みイメージ

「つなぐチカラの進化」については、「日常をつなぐ」「非日常をつなぐ」「空が見えればどこでもつながる」という3点に取り組む。

「日常をつなぐ」

「日常をつなぐ」の取り組みでは、高品質の5Gネットワーク・エリアを構築を進める。

快適な5G通信を可視化させることや5万局を超えるSub6/ミリ波基地局の設置、混雑時でも、より快適につながる「au 5G Fast Lane」の展開を進めていく。

さらに、ミリ波中継器やミリ波反射板といったミリ波を活用するための研究・開発を推進することにも注力する。

  • ミリ波を活用するための研究・開発を推進

    ミリ波を活用するための研究・開発を推進

具体的にミリ波中継器においては、エリアを拡大する無線中継技術を開発し、ミリ波中継器に実装。ミリ波反射板においては、電波の反射方向・範囲を変更できる液晶メタサーフェス反射板を開発したという。

「非日常をつなぐ」

「非日常をつなぐ」取り組みとしては、石川県でStalinkを用いた災害対応を進めていく。

「Starlink(スターリンク)」とは、数千機もの低軌道衛星を用いた「衛星ブロードバンドインターネット」のこと。導入することで、通信環境が整備されていない山間部でも高速・低遅延のインターネット接続が実現する。

Stalinkを活用することで、海上からの通信の復旧や基地局の応急復旧、災害医療現場の支援などの取り組みを強化していく。

  • Stalinkを用いた取り組み

    Stalinkを用いた取り組み

「空が見えればどこでもつながる」

「空が見えればどこでもつながる」の取り組みとしては、「au Starlink Direct」という日本全国をカバーする、衛星とスマホの直接通信サービスをスタートした。

「au Starlink Direct」は、スペースXが開発した最新鋭かつ低軌道のStarlink衛星とスマートフォンが直接接続できるサービス。

このサービスにより、au 5G/4G LTEエリア外で、空が見える環境であれば、衛星モードに自動で切り替わり、テキストメッセージの送受信などができるようになる。

「KDDI AIデータセンター構想」とは?

上記に挙げた取り組みの他にも、KDDIはパートナーとの戦略的な技術連携で、5Gインフラの変化を加速させる取り組みにも力を入れている。

2025年5月に締結したDriveNetsとの戦略的パートナーシップでは、オープン化したルータの導入領域拡大や、オープンネットワーク管理の効率化、設備投資や運用コストの最適化を目指している。

さらに同月に締結したAMDとの技術提携は、AI時代の5G仮想化ネットワークの高度化に向けたもので、KDDIの5G仮想化ネットワークに第4世代 AMD EPYC CPUを採用した。

「『KDDI AIデータセンター構想』の下、全国にAI計算基盤を分散整備し、レスポンス向上・トラフィック削減を実現しています。エッジAIデータセンターの展開により推論需要の拡大に対応していきます」(藤井氏)

  • KDDI AIデータセンター構想

    KDDI AIデータセンター構想

この取り組みの先駆けとして、KDDIは2025年4月に、AIデータセンターの構築に向けて、シャープとシャープ堺工場の土地や建物などを取得することについて売買契約を締結。

NVIDIA GB200 NVL72をはじめとした最新のGPU基盤を導入し、兆単位パラメータの大規模な生成AIモデルを高速に開発できる「大阪堺データセンター」として、2025年度中の稼働開始を目指しているという。

大阪堺データセンターを生成AIの開発やその他のAI関連事業に活用するほか、AI時代のビジネスプラットフォーム「WAKONX」を通じて企業などへ提供するという。

また、大阪堺データセンターでは最新の電源技術や水冷技術を用いることで電力使用量を抑えた上で、再生可能エネルギー由来の電力を100%利用して環境負荷を低減し、カーボンニュートラルに貢献したい考え。

また6月には東京都多摩市に新たなデータセンター「Telehouse TOKYO Tama 5-2nd」の建設を開始したことを発表した。

同施設では、100%再生可能エネルギーを活用し、環境に配慮した運営で、社会の持続的成長とAIへの対応を両立していくという。

藤井氏は最後に「AIが労働力となる時代がすぐそこに迫っている」と述べた上で、「KDDIは通信とデータを磨き、AI時代を支えていく」と強い決意を見せていた。