日本人のコミュニケーションに欠かせないツール「LINE」に、リリース前の新機能を試せる「LINEラボ」があるのはご存じだろうか。

「LINEラボ」で提供している機能の一つに「AIメッセージ変換(※現在は「LINE AIトークサジェスト」として提供中)」がある。この機能は、トークルームで入力した下書きメッセージの口調を敬語、ねこ語、侍言葉などに自動で変換する。この機能が開発された狙いに、若者が抱えるコミュニケーションの課題を解消することがあるという。

今回、「AIメッセージ変換」を中心に、LINEにおけるAI活用について、LINEヤフー コミュニケーションカンパニー サービス統括本部 Product Management室 Platform Productチーム 鈴木康介氏、LINEヤフー コミュニケーションカンパニー メッセンジャー統括本部 メッセンジャープロダクト室 メッセンジャープロダクト1チーム 松浦一輝氏に聞いた。

  • 左から、松浦一輝氏、鈴木康介氏

AIによってLINEユーザーの課題を解決

LINEは、質問に答えてくれるAIサービス「LINE AIアシスタント」を提供している。AIとチャットを組みわせたサービスのなかでも、特にLINEはAIと親和性が高いと言える。

鈴木氏は「日本の課題として、AI活用に興味があるけど使っている人は少ないことがあります。総務省が発表している『情報通信白書』をみても、日本の課題として、AI活用に興味があるけど使っている人は少ない傾向です。そこで、LINEでAIが使えるようにすることにより、AIを使いたいけど使えていなかった人の敷居を下げ、より多くの人にAIを利用するきっかけを提供したいと考えています」と、LINEでAIサービスを提供する狙いを語る。

また、松浦氏は「チャット形式で対話できるLINEはAIと親和性が高いので、UIに組み込むことでユーザー体験の向上が見込めます。私たちはユーザーの課題解決を最優先に考えており、AIがユーザー課題を解決できる有効的なツールなのであれば積極的にAIを活用したいと考えています」と説明する。

さらに、鈴木氏は「現在、AIはビジネス領域やクリエイティブな領域で進化していますが、それ以外の領域ではメリットを十分に享受できていません。だからこそ、多くのユーザーに使っていただいているLINEでブレイクスルーを実現したいと考えています」と話す。

  • 「LINEで日本のAI活用のブレイクスルーを果たしたい」と語る鈴木氏

目上の人に対する返信で悩む若者を救う

そして、「AIメッセージ変換」の企画を担当したのが松浦氏だ。同氏はユーザーにインタビューを行う中で、「上司、大学の先生、バイト先の店長など、目上の人に返信しなければならないが、敬語の使い方などが理由で返信が滞っている」といった悩みを聞いたという。「返信しなければならないメッセージが溜まってしまって、LINEが開きたくなくなるというユーザーさんもいました」と同氏。

2023年に新卒でLINE(現LINEヤフー)に入社した松浦氏も「若者世代」であり、同世代だからこそ、こうした悩みも共感できるだろう。

このように、LINEで目上の人に敬語を使うのが難しいという若者たちの悩みが、「AIメッセージ変換」が生まれるきっかけとなった。「目上の人のメッセージに返信しなければいけないけど、失礼があってはいけない」と悶々とする若者の姿が頭に浮かぶ。

こんな若者たちを救うべく、「AIメッセージ変換」は、トークルームで入力した下書きメッセージの口調を「敬語」「誤字修正」「タメ口」「ねこ語」「侍言葉」に自動で変換してくれる。

目上の人にメッセージを送るときは、「敬語」への変換や「誤字修正」の機能が役に立つ。一方、「タメ口」の機能は絵文字がないと冷たい印象を受ける文章に親しみを持ってもらいたいときに使うとよさそうだ。「ねこ語」「侍言葉」はちょっとした仲間とのコミュニケーションに使えそうだ。

こうしてみると、本来プライベートのコミュニケーションに使われていたLINEが現在は幅広いコミュニケーションに活用されていることがわかる。

松浦氏によると、SNSでは侍言葉が人気であり、「AIメッセージ変換」を使ったメッセージも増えているという。「AIメッセージ変換は若い人たちのコミュニケーションの課題の解決につながっているとうれしいです」と同氏は話す。

  • 「若者の悩みを解決するためにAIメッセージ変換を開発した」と語る松浦氏

LINEのエンジニアはAIをどう使う?

続いて、お二人にどのような用途でAIを活用しているかを聞いてみた。

鈴木氏は、企画のアイデア出し、海外の人に送るメールの作成、AIモデルの性能を試す検証用の会話の作成などにAIを使っているという。同氏はAIを使ってみての気づきについて、次のように話す。

「AIが出したアウトプットの正誤判断は自分でする必要があります。AIが作ったコードは動きますが、そのバックグラウンドを理解する必要があります。AIに丸投げではいけません」

そして、「AIに丸投げできないからこそ難しい。AIが当たり前として生きてきたら、AIのアウトプットを判断できるでしょうか」と、鈴木氏は疑問を投げかける。

現在の大学生はAIありきで論文やレポートを作成する状況となっており、ある大学では、AIを使ってもいいけどプロンプトを提出することが求められるという。もはや、「AIをどう使うか」が問われる時代となってきている。

一方、松浦氏はAIを相談相手として使っているほか、長文のメールをAIにまとめてもらっているという。また、同氏は「AIの画像生成は便利です。図を作ったり、表を作成して図にしてくれたりします」と語っていた。

もっと人間らしくAIを使ってもらえる世界を目指して

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