データセンターは今、「作れない」という課題に直面している。電力不足や建設コスト高騰の問題から、新設には時間がかかるためだ。
アイネットはこの課題に対し、NTT局舎内に拠点を拡張する「DC in DC(Data Center in Data Center)」という手法を採用。その接続基盤としてIOWNを選択した。
結果、既存DCとの通信は1ms以下の低遅延を実現したという。なぜIOWNだったのか、従来との違いは何か――アイネット、NTT東日本、NTT-MEの方々にその狙いを聞いた。
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左から、NTT-ME 通信キャリア&データセンタビジネス部データセンタ事業推進部門 DCプロデュース担当 担当課長の敦賀屋堅太氏、NTT東日本 神奈川支店 第二ビジネスイノベーション部 第一産業基盤ビジネスグループ 産業基盤ビジネス担当 担当課長 権守祐太氏、NTT-ME 通信キャリア&データセンタビジネス部 データセンタ事業推進部門 データセンタプロデュース担当チーフの鈴木典生氏、NTT東日本 神奈川支店 第二ビジネスイノベーション部第一産業基盤ビジネスグループ 産業基盤ビジネス担当の漆原智成氏、アイネット データセンター本部 本部長の岡本洋一氏、アイネット データセンター本部 ダイレクトセールス事業部 上級スペシャリストの村田俊一郎氏、アイネット データセンター本部 DCマネージドサービス事業部 ファシリティサービス部 部長の赤井康氏
なぜ新たなデータセンターが必要だったのか?
アイネットは2026年1月20日、横浜市に新たなデータセンター「inet annex」を開設した。inet annexは1ラックから対応可能なハウジングサービスを提供するとともに、アイネット独自で事業者間相互接続している、自社データセンターとの接続が可能だ。既存データセンターとの接続にはIOWNが採用されている。
--アイネットのビジネスとinet annex開設の背景について教えてください--
アイネット・岡本氏: 弊社は現在約2500ラック規模で横浜地区に自社データセンター(DC)を構えており、クラウドサービス基盤だけでなく、コロケーションの提供もしております。
次期DCを模索していますが、建設コスト高騰もさることながら電力調達に時間がかかるためDC開設まで時間を要します。一方で、このままでは満床になって売り物がなくなってしまうかもしれないという課題を抱えていました。
そうした中、NTT東日本の局舎内にある程度のスペースと電力が確保できるというお話をいただきました。弊社としても既存のDCから2~3kmと非常に近いため、リモート監視・運用に有利であり、かつ、局舎内であるため堅牢という面でも魅力的でした。
そこで、弊社の第二DCの張り出しという位置づけとしてNTT局舎内にデータセンターを構築するDC in DC(Data Center in Data Center)という形態で約100ラックの分所「inet annex」を作ることになりました。
NTT-ME鈴木氏: 今回、NTT-MEがDC構築を担当させていただきました。NTT東日本グループとしてはアイネット様の要望に応じてDC構築を請け負い、設計段階からアイネット様と相談・協力して進めました。
なぜ専用線ではなくIOWNを選んだのか?
IOWN採用のポイント
- 遅延:1ms以下(従来は約2ms)
- 帯域:40Gbps(10Gbps×2回線×2ルート)
- 冗長:異ルート構成
- 拡張:後から増速可能(工事不要)
--既存DCとの接続にIOWNを使用した背景、そのメリットについて教えてください--
アイネット・岡本氏: 一般的なDC間は専用線で結びますが、帯域がおおむね固定となるために初期コストが高いという問題があります。また、近距離でも遅延が問題となります。
冗長性確保と障害対策のために異キャリア接続にしても、実際にはキャリア間の話し合いがないため同一経路となってしまって障害対策にはならない可能性があります。
今回のannexはアイネット第二DCの張り出しの位置づけということもあり、ストレージデータも多く流れます。そのため、遅延と取り回しの問題が課題点でした。
NTT東日本様とのやり取りによって2回線を異ルートで引くことで障害対策を行いました。このように運用と設計の自由度の確保という観点からもIOWNは有利でした。IOWNを使用すると必要な帯域を確保することで初期コストを抑えられます。今回は10Gbpsx2を2ルートで40Gbpsの契約です。
専用線の場合は近距離でも2msの遅延を覚悟しなければならなかったのですが、IOWNにした結果、実測値で1ms以下の遅延と良好な数値となっております。
IOWNはどこまで実用に耐えるのか?
NTT東日本・漆原氏: 今回提供しましたIOWN APNはオールフォトニクスコネクト技術を活用した回線・ネットワークサービスで、現在IOWN 1.0のサービスとして提供しており、2030年度以降に提供が予定されているIOWN 4.0へ向けた研究開発を進めております。
アイネット様が契約された「All-Photonics Connect powered by IOWN」のタイプ2は100GbpsのIOWN物理回線を使用しており、10Gbps単位でスケールアップが可能で後日帯域が必要になった場合でもファイバー敷設工事なしで比較的迅速に増速に対応できます。
IOWNの特徴として大容量・低遅延のイーサネット通信を帯域保証型で提供しており、24時間365日の監視保守体制に加えて、故障時はメールや電話にて「障害が発生しました」と連絡し能動的に対応する運用を行っております。
この点を「運用のアイネット」と称されるアイネット様のブランド価値にマッチする回線サービスとご評価いただいております。
今後、データセンターはどう変わるのか?
--今後はどのような計画をお持ちでしょうか?--
アイネット・岡本氏: 現状はDC間接続といったB2B用途が基本となっていますが、将来的にはB2C向けにも発展させたいと考えています。
従来はDC一極集中の上にキャリアのネットワークがあって、そこから出すという形でしたが、今後はコアの部分をAPNが拡張していくことによって、APNで顧客から一番近い所から出すという形にして、オールフォトニクスのネットワークが拡張していくことによってエッジを増やしていく形にできるとよいと考えています。
今後の発展を見据えて、未来を顧客に見せていこうというのもIOWNを採用した理由の一つになります。
NTT東日本・漆原氏: NTTグループとしては、2030年実現に向けて開発しているのが超低消費電力の取り組みで、チップから直接光を取り出す技術を開発中です。これは技術性能だけでなく、地域の運営コストの面で電気代だけでなく、脱炭素の部分でも達成できるのではないかと考えております。
アイネット様の環境に対する強い思いは弊社とも重なる部分があると考えております。DCを皮切りにB2Cの方にも価値を提供できると、今後地域社会に貢献できる分野の一つになるかと思われます。
NTT-ME敦賀屋氏: 現在、NTT東日本グループで35のDCを構えておりますが、AIの利用拡大などからDCの需要が高まっているため、まだまだDCが足りないところがあると考えております。
大都市部の電力需要がひっ迫していることもあり、昨年より国を挙げてワット・ビット連携構想が進められており、地方にDCを作るという流れがあります。
電力会社が変電所の余力などを考慮して地方にデータセンターをどんどん増やし、そうしたDCにIOWNも含めてネットワークを提供して、都心のDCと同様の環境を地方で作る。こうした動きがDCのトレンドになってくると考えています。
DCの基盤だけでなく、DC間ネットワークも導入を進めていきたいと思っております。われわれはDCだけでなく電気通信設備の運用実績も豊富で、企画検討の段階から、設備の構築、ネットワークの構築、それらの運用を含めてトータルで上流から下流まで一元的に提供できるエンジニアリング力を持っていると自負しております。
今回のアイネット様のようなDC事業者様への下支えを今後も拡大して、DC業界を盛り上げていきたいです。
IOWNは全国展開も可能なのか?
--サービスイン当初のIOWNは「都道府県内接続のみの提供」でした。地方に分散させることを考えると、都道府県内接続のみという制限が変わったのでしょうか?--
NTT東日本・権守氏: R&Dの技術デモとして台湾まで接続したこともあり、現在は沖縄から北海道まで敷設することも可能です。ただしNTT東西拠点をまたがる場合には、NTT東日本に加えてNTT西日本との契約が必要となり、経路設計に多少時間をいただくことになります。
--なるほど、日本津々浦々にDCを建築しても、IOWNによる大容量低遅延の接続が可能ということですね。IOWN 4.0の超低消費電力にも期待したいと思います。本日はありがとうございました。--




