ソフトバンクグループ(SBG)と米OpenAIは2月3日、生成AIの共同出資会社「SB OpenAI Japan」を設立すると発表した。新会社は最先端AI「クリスタル・インテリジェンス(Cristal intelligence)」を開発し、日本の主要企業に対して独占的に販売する。“各企業専用のAI”と位置づけ、自社のシステムやデータと連携したAIエージェントを構築できる。

  • ソフトバンクグループと米OpenAIは生成AIの共同出資会社「SB OpenAI Japan」を設立する。ソフトバンクグループ 孫正義会長兼社長(左)とOpenAI サム・アルトマンCEO(右)

    ソフトバンクグループと米OpenAIは生成AIの共同出資会社「SB OpenAI Japan」を設立する。ソフトバンクグループ 孫正義会長兼社長(左)とOpenAI サム・アルトマンCEO(右)

SBGの孫正義会長兼社長、OpenAIのサム・アルトマンCEO(最高経営責任者)らは同日、日本の株式市場の時価総額の半分を占める500社超を集めたイベントを開いた。孫氏は未来を見通せるイメージがある水晶玉を見せながら「AGI(汎用人工知能)革命は、大企業から始まる。OpenAIとのパートナーシップにより、世界初となる企業向けの最先端AIの提供を日本から始めることができる」と述べた。

  • 最先端AI「クリスタル・インテリジェンス(Cristal intelligence)」を開発・販売する

    最先端AI「クリスタル・インテリジェンス(Cristal intelligence)」を開発・販売する

約4500億円を投じグループ全社に最先端AIを展開

新会社はOpenAIとSBGの通信子会社ソフトバンクが折半出資で設立する。OpenAIが最先端のAI研究と技術、技術面で支援し、ソフトバンクがエンジニアと営業を担う社員を配置し、強固な法人顧客基盤を生かして営業展開を行う。

販売するクリスタル・インテリジェンスの基盤は、OpenAIが2024年に公開した論理的推論が可能なAIモデル「o1シリーズ」。財務関連の資料作成や文書の作成、顧客の問い合わせ管理などの日常におけるタスクを自動化することができるという。

企業への販売に先駆け、SBGはOpenAIのソリューションを全ソフトバンクグループ各社に展開する。利用料として、年間30億ドル(約4500億円)を支払い、世界で初めてクリスタル・インテリジェンスを大規模に導入するとともに、ChatGPT Enterpriseなどの既存ツールも全グループの従業員に展開する。

  • SBGはOpenAIのソリューションを全ソフトバンクグループ各社に展開する

    SBGはOpenAIのソリューションを全ソフトバンクグループ各社に展開する

例えば、ソフトバンクはクリスタル・インテリジェンスを活用して1億以上のタスクを自動化するという。追加学習およびファインチューニングを行う環境も構築し、エコシステム内で業務効率を向上させて、新たなビジネス機会の創出を目指す。

孫氏は「ArmやLINEヤフー、PayPayなど、ソフトバンクグループ全体で約2500もの基幹システムがある。約30年前から作りこんできたシステムのソースコードやプログラムを持っているが、クリスタルはそれらすべてを一気読みする。その企業のためだけにカスタマイズでき、学習成果は漏れない。その会社専用のAIエージェントだ」と強調した。

会議の意思決定の助言役や商談の進行役としても使え、人間に代わって作業もしてくれる存在だという。「目的の出力を生成させる『プロンプトエンジニアリング』のスキルはもう必要ない。クリスタル・インテリジェンスは『あの件どうなった?』と聞くだけで正しい回答や判断をしてくれる」(孫氏)

アルトマン氏は「ソフトバンクとの取り組みは、我々のビジョンの実現を加速させるもの。日本を皮切りに、世界で最も影響力のある企業に対して革新的なAIを提供していく」と話した。

  • OpenAI サム・アルトマンCEO

    OpenAI サム・アルトマンCEO

AGI実現に欠かせない“長期記憶” 孫氏「発明者は僕だった」

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