今冬、日本海側で記録的な大雪になったのは、偏西風が日本付近で南に蛇行して強い寒気を伴った大規模な低気圧が分裂・南下したことなどが要因、とする見解を気象庁の異常気象分析検討会(会長・中村尚東京大学先端科学技術研究センター教授)が18日発表した。同検討会は、地球温暖化による気温や海面水温の上昇により大気中の水蒸気量が増え、気温が低い地域で降雪量の増加につながったとしている。

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    2月に寒波をもたらした大規模な大気の流れの模式図(気象庁提供)

中村教授ら気象の専門家で構成する同検討会によると、2月に入ると上旬と中旬後半から下旬前半にかけて日本付近に強い寒気が流れ込み、北日本から西日本の日本海側を中心に各地で大雪となった。累積降雪量は2月に急速に増加し、全国336の気象台などのうち9地点で年最深積雪記録を更新した。

特に北海道帯広市では2月4日午前9時までの12時間に120センチと国内の観測史上最多の降雪量を記録した。また、2月中旬後半から下旬前半の寒波に伴って、秋田県鷹巣(北秋田市)では2月21日までの72時間に91センチの降雪量を記録した。

こうした大雪をもたらした大気の流れの特徴は、今冬を通じて日本付近で亜寒帯の偏西風と亜熱帯の偏西風がどちらも南に蛇行したこと。そして冬型の気圧配置が持続しやすく、2月上旬と中旬後半から下旬前半にかけて2つの偏西風の南への蛇行が特に強まり、強い寒気が日本付近に南下した。上空約1500メートルで氷点下9度以下という強い寒気が2月中に2度も発生したのは1956年以来の珍しい現象だった。

特に亜寒帯の偏西風の南方への蛇行により、北極域に存在していた強い寒気を伴った「極渦」と呼ばれる大規模な低気圧が分裂して、その一部が日本の北方に南下しやすかったことが記録的な大雪の要因になったという。一方、今冬は冬型の気圧配置の日が多かった影響で、東日本と西日本の太平洋側では観測史上最小の降水量を記録した。

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    今冬の最深積雪の平年(1991~2020年の平均値)比(気象庁提供)

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    2025年2月3~9日の12時間降雪量の期間最大値(気象庁提供)

こうした2月上旬の日本海側と北海道十勝地方の大雪に対する地球温暖化の影響を、文部科学省気候変動予測先端研究プログラムの研究グループが高解像度の気象モデルを用いた数値シミュレーションで解析した。

その結果、地球温暖化による気温と海面水温の上昇に伴って大気中の水蒸気量が増えて降水量が増加し、気温が低い地域では降雪量の増加につながったことが判明。温暖化の影響としてはこれまで降雪量や積雪量は減ると予測されていたが、今回のように強い寒気の流入があると降雪量は増加する可能性があることが分ったという。

気象庁の検討会は今回、今冬の大雪の要因となった偏西風の蛇行と温暖化の関係については分析していないが、国内外の多くの気象の専門家は北極域の温暖化が北半球の偏西風の蛇行をもたらしていると見ている。検討会会長の中村教授は「今後も地球温暖化が続くとみられることから、雪の量が増えることを想定して備える必要がある」と指摘している。