アークエッジ・スペースは2月4日、同社の既存投資家であるインキュベイトファンド、新規投資家であるJICベンチャー・グロース・インベストメンツ、およびEiLの3社をリード投資家として、計15社を引受先とする総額80億円となるシリーズBラウンドの資金調達を実施したことを発表した。

  • 総額80億円のシリーズB資金調達を実施

    アークエッジ・スペースは総額80億円のシリーズB資金調達を実施した(出所:アークエッジ・スペース)

アークエッジ・スペースは、IoTデータ収集やリモートセンシングに加え、船舶向け衛星通信(VDES)および光通信など、さまざまなミッションへの対応が可能な6U衛星の標準汎用バスシステムの開発や、量産システムおよび複数衛星の自動運用システムの構築に取り組んできた宇宙スタートアップ。2024年11月には、6U衛星の汎用バスにおける基本設計・開発・量産試験を順次完了し、打ち上げおよび軌道上実証のフェーズへとチャレンジの場を移行している。

また同社はVDESの分野で、2023年3月に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する「経済安全保障重要技術育成プログラム/船舶向け通信衛星コンステレーションによる海洋状況把握技術の開発・実証」に採択され、基本的な衛星システムの設計や重要要素技術の開発などを実施。2024年11月には宇宙航空研究開発機構(JAXA)が実施する宇宙戦略基金の公募事業「商業衛星コンステレーション構築加速化」にも採択され、今後も商業コンステレーションの構築に向けた対応を進めていく予定だとする。

そして地球観測の分野では、2023年10月に「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」に採択され、農林業の環境モニタリングや温室効果ガスなどの大気観測を目的とした、多様な周波数データを収集可能な多波長リモートセンシング衛星システムの、衛星システム設計や重要要素技術開発などに取り組んでいるとのこと。また、衛星データプラットフォームを通じた宇宙利用による地球規模課題への対応および持続可能な開発の実現に向け、南米や中央アジアなどの複数機関と宇宙産業協力に関する連携を開始している。

加えて月インフラ・衛星測位の分野では、2021年以降順次採択された「宇宙開発利用加速化戦略プログラム」にて、JAXAと共同で月面活動に向けた新たな通信・測位インフラの構築を目指し、月測位システムの開発を推進。2024年10月からは、月での技術を応用する形で、地上や地球低軌道のユーザーに対して位置情報および時刻情報を提供する“低軌道測位衛星システム”(LEO-PNT)の実現に向けた検討も開始しているとのことだ。

このように、超小型衛星システムの総合インテグレータとして活動を続けるアークエッジ・スペースは、同社に対する需要と期待が高まりを見せているとしており、2022年3月に実施されたシリーズA資金調達以降の累計受注・採択総額は320億円を突破し、従業員数も4.5倍以上の126名(2025年1月時点)に増加したとする。

  • シリーズAから現在のシリーズBまでの歩み

    アークエッジ・スペースのシリーズA(2022年3月)から2025年1月現在までの歩み(出所:アークエッジ・スペース)

そして同社は今回、総額80億円のシリーズB資金調達を実施。これを通じて、地球規模課題への対応および持続可能な開発の実現を目指し、国内外の政府機関や民間事業者向けに、船舶・海洋を対象とした双方向通信を実現するVDESや海洋状況把握、さらに多様な周波数データを収集可能な多波長リモートセンシングなどにも対応可能な商業衛星コンステレーションの構築を加速させるとした。

また、光通信などの衛星基盤技術の獲得や人材基盤の拡充を進めるとともに、6U衛星での量産体制構築の実績を踏まえて、より大きなサイズとなる50kg級などの超小型衛星にも対応可能な量産体制の構築を進める計画を明らかにしている。

  • 資金調達の引受先企業ロゴ

    今般の資金調達の引受先企業ロゴ(出所:アークエッジ・スペース)