北海道教育大学(北教大)、神戸大学、中京大学の3者は12月6日、中強度の20分の運動後に記憶学習をした後の記憶保持に対する影響を調査した結果、24時間後では運動条件と安静条件間に差が見られず、4週間後でも統計学的な差は認められなかったものの、6週間後と8週間後では、運動条件の正答数が安静条件よりも多いことがわかり、しかし11か月後には条件間での差は消失していることが確認されたと共同で発表した。

  • 今回の研究の概要図

    今回の研究の概要図(出所:中京大プレスリリースPDF)

同成果は、北教大 岩見沢校 スポーツ教育課程の森田憲輝教授、神戸大 人間発達環境学研究科の石原暢准教授、中京大 教養教育研究院の紙上敬太准教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、豪州スポーツ医学協会が刊行するスポーツにおける科学と医学に関する全般を扱う学術誌「Journal of Science and Medicine in Sport」に掲載された。

学習内容や体験したことなどを記憶時点から数分から数十分、さらには数年以上の期間保持する脳機能のことを「長期記憶(エピソード記憶)」という。しかし長期記憶といえども時間と共に忘れていくため、1か月後にはおよそ20%しか残らないとされる。それに対し、運動後に学習すると長期記憶が向上することが知られており、これまでの研究では1回の運動で最長1週間ほど長期記憶の向上が確認されていた。ただし、その効果がどれほど持続するのかについては不明だったとする。そこで研究チームは今回、運動後の長期記憶向上に持続的な効果が示されれば、学校での学習や職場、そして日常生活において運動の効果的な利用を推奨できるのではないかと考え、どれほど持続するのかを調査したとする。

  • 記憶した情報の時間経過による忘却・記憶保持の割合

    記憶した情報の時間経過による忘却・記憶保持の割合(図の出典:sakura394.jp)(出所:中京大プレスリリースPDF)

今回の研究には健康な大学生44名が参加し、実験には「クロスオーバー法を用いた被験者内比較対照実験」という研究デザインが用いられた。クロスオーバー法とは、実験条件の順番で生じうる影響を相殺するため、同じ被験者が複数の条件をランダムな順番で体験する方法のこと。一方の被験者内比較対照実験とは、同じ被験者に対して複数の条件を異なるタイミングで与え、条件間の違いによる変化を比較する実験方法だ。この両者を組み合わせることで、実験条件の順番による影響と個人差による影響をどちらも最小限に抑えることができるとしている。

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