2024年もいよいよ終わりが近づいてきたが、1年にわたって米中の間では半導体関連の激しい紛争が生じ続けた年となったと言えよう。

その始まりは2022年10月に遡る。米国のバイデン政権は2022年10月、中国が先端半導体を軍事転用し、人民解放軍の近代化を図ろうとしていることを警戒し、先端半導体分野における対中輸出規制を強化した。しかし、米国単独では中国による先端半導体そのものの獲得を防止できない、それに必要な材料や技術が中国に流出する恐れがあると判断した米国は2023年1月、先端半導体向け製造措置で強みを持つ日本とオランダに対してこの規制に参加するよう呼び掛け、日本は203年7月、先端半導体の製造に必要な14nmプロセス以下の半導体製造が可能な製造装置として、繊細な回路パターンをウェハに形成できる露光装置のほか、洗浄装置や検査装備など23品目を新たに輸出管理の規制対象に加えた。

だが、バイデン政権はそれだけでは満足しなかった。バイデン政権は日本やオランダの半導体関連企業が過去に中国に販売した製品を修理し、予備部品を販売し続けているという状況に不満を抱き、米国並みにもっと踏み込んだ規制を敷くよう求めている。そして、バイデン政権は今年4月、オランダ政府に対して同国の半導体製造装置大手ASMLが中国企業に販売した半導体製造装置の保守点検や修理サービスなどを停止するよう求め、その後、オランダはASMLの半導体製造装置の対中輸出規制を強化する方針を発表した。バイデン政権は韓国やドイツなど他の同盟国にも半導体分野の対中輸出規制に参加するよう要請するなど、米国は先端テクノロジー分野における中国排除に躍起になっており、同盟国に対する不満も依然として根強い。

そして、その姿勢は今年も顕著に見られた。例えば、バイデン政権は5月、中国から輸入する2兆8000億円相当の製品に対する関税を引き上げることを発表し、具体的には中国製の電気自動車が現行の25%から100%の4倍に、車載用電池が7.5%から約3倍にあたる25%に、太陽光発電に使用される太陽電池が25%から50%にそれぞれ引き上げられ、自動車や家電製品などに幅広く使われる旧型のレガシープロセスを採用した半導体の関税も引き上げられることになった。この措置は不公正な政策をとる貿易相手国への制裁を認める米通商法301条に基づくものだが、バイデン政権は国の補助金で安価な電気自動車の大量生産を強化し、それを米国へ輸出しようとする中国に強い警戒感を抱いている。

こういった米国側の対中強硬姿勢、それに加わる日本などに対して、中国側の不満は強まるばかりだ。中国は9月、中国企業への半導体製造装置の販売や関連サービスの提供で日本が輸出規制をさらに強化すれば、対抗措置として厳しい経済制裁を発動すると日本を牽制した。これについて、大手自動車メーカーをはじめとする製造業では、中国が対抗措置として自動車生産に不可欠な重要鉱物の輸出を停止してくるのではないかと警戒感が広がった。幸いにも今日までに大きな影響は出ていないが、中国は同月に希少金属の一種であるアンチモンの関連品目を輸出規制の対象に新たに加え、無許可で輸出することを禁じる措置を発表した。アンチモンは半導体を製造するための材料の1種であり、その生産における世界シェアで中国が50%近くを占めており、日本側の懸念は依然として根強い。中国は、日本が半導体分野で規制を強化すれば希少金属分野で対抗するという姿勢を今でも保持しているということだろう。

しかし、米国はそういった警戒心を持っていないどころか、先端テクノロジー分野からの中国排除のためなら迷いはない。最近でも、バイデン政権が12月頭に、中国に対する先端半導体の輸出規制を強化する方針を示した。新たな規制では、人工知能に必要な半導体製造装置や高性能メモリーなどが対象となり、米国との貿易が禁止されるリストに新たに140社あまりの中国半導体関連企業が追加された。今回の措置について、バイデン政権は米国の安全保障を脅かす先端技術の自国生産を中国に断念させるためだと強気の姿勢を示した。このようなバイデン政権の姿勢は、皮肉にもバイデン氏を批判してきたトランプ氏に継承されることになる。2025年以降、米国はよりいっそう大胆かつ派手な規制を発動していくことになろう。