三菱電機は、理化学研究所、分子科学研究所と共同で、強力な短パルスで世界最高クラスの出力という235ミリジュールを実現した「サブナノ秒パルス深紫外レーザー装置」の開発に成功したと11月26日に発表。持ち運べるサイズのため、現在は分子科学研究所内の理化学研究所スペースに移設しており、加速器の研究開発に活用するとしている。
三菱電機は今回、非常に短い時間にエネルギーを放出する短パルスのマイクロチップレーザーを装置に採用し、ビーム径を最適化することで、サブナノ秒パルス深紫外レーザー装置において世界最高クラスの出力となる235ミリジュールを実現。
また、理化学研究所と分子科学研究所と連携して開発した、分布面冷却(Distributed Face Cooling)の技術を使用した高排熱チップを採用している。従来の高出力レーザーは低温冷却が必要だったが、これによって常温でも動作できるようにし、装置のサイズも小型化したとする。
なお、パルスの時間は通常1ナノ秒(10億分の1秒)以下だが、サブナノ秒はそれよりもさらに短い。短パルス化によって、同じエネルギーでもピーク出力を高めることが可能で、レーザー加工などで有用だという。三菱電機は今後もレーザー加速技術の開発と、レーザー装置の小型化を推進し、幅広い分野での技術革新に貢献していくとしている。
技術背景
高出力レーザーの小型化・低コスト化は、加速器の小型化やレーザー加工の高度化、核融合応用において重要な技術課題とされる。
加速器とは、電子や原子などに強い電界を加えることで粒子の動きを加速させて、粒子が人体や物体の深部まで到達するという特性を活用した装置のこと。主に新材料や新薬の開発、粒子線がん治療などに使われる。加速器には大型装置が必要となることから、小型化を追求するためレーザー加速技術の研究が世界各国で行われている。
しかしレーザー加速には高出力のレーザー装置が必要となるため、レーザー加速が実現した場合でも装置自体が大きくなり、結果として加速器全体が大型化するという課題があった。また、レーザー装置はレーザー加工やセンシングなどの分野でも幅広く活用されているが、導入にあたり装置の大きさやコストが課題となる。
核融合の分野でもレーザー技術が注目を集めているが、レーザー核融合プラントの建設コストの大半はレーザーになるとの試算もあり、小型化・低コスト化が求められているとのこと。