東京ビッグサイトにて6月26日から28日まで「自治体・公共Week 2024」が開催されている。ヤマハ発動機は、自動航行型無人ヘリコプターで上空から森をレーザ計測できる「RINTO」(りんと)を紹介。最新鋭LiDARにより森林内部まで精緻に3Dデータ化できるサービスとあり、自治体関係者を中心に注目を集めている。
RINTOの強み
自治体・公共Week 2024には、今年も全国から自治体、公共機関、官庁の関係者が来場。同時開催の6つの専門展(自治体DX展、地方創生EXPO、地域防災EXPO、スマートシティ推進EXPO、自治体向けサービスEXPO、インフラメンテナンス展)は、いずれも盛況となっている。
ヤマハ発動機は「スマートシティ推進EXPO」にブースを設置。移動手段の確保および観光振興を狙う「グリーンスローモビリティ」の取り組みとともに、森林計測サービスのRINTOをアピールしている。
ヤマハ発動機 新事業開発本部の川畑尚毅氏に詳しい話を聞いた。RINTOは、高い航行性能を誇る同社製ヘリコプター「FAZER R G2」に業界最高水準のLiDARを搭載したもの。1日あたり最大100haの森林を精緻にスキャンできるのが特徴だという。
FAZER R G2は最大積載量が35kg、航続距離は90km、航続時間は100分。390ccの4ストローク水平対向エンジンを搭載しており、一般的な産業用ドローン(航続時間は長くても30分前後)と比較して長い時間飛行できるという優位性がある。川畑氏は「低空で長時間ゆっくり飛行することで、ドローンや航空機では計測できないほど精緻なデータを獲得できます」と説明する。
RINTOのネーミングには、森林とそこに息づく生命に敬意を持ちその価値を大事にする“林と”、年輪を重ねる長い年月を想定して生命と水と空気の循環を意識する“輪と”、謙虚に誠実に森と向き合って自分たちのできることを考える“凛と”、といった思いを込めたとのこと。
RINTOに寄せられる問い合わせの8割以上は、自治体から。そのニーズの大きさについて、川畑氏は「背景にあるのは、いま全国的に進んでいる山の所有者の高齢化問題です。『もう自分たちでは森林を管理できなくなった』というケースが増えており、国内各所で森林の管理が市町村に委託されています。市町村では森林管理経営法に従って森林を適切に管理したい、けれど従来の計測手法では膨大な時間とコストが必要となってしまう――。そこでRINTOにご注目いただいています」と解説する。
RINTOなら、数百ha単位の広大な森林でさえ短期間で3次元デジタルデータ化できる。地表面も解析できるほか、立木なら1本1本に至るまで検出可能。川畑氏は「例えば、その土地に樹高・直径がどのくらいの檜が何本生えているかまで分かるので、森林価値の計算にも役立ててもらえます」と説明する。
自治体が土地を測量する用途のほかに、パートナー企業とのコラボも進んでいる。地域の森林を活用した林業サービスを展開しているTree Lumberとの協業では、山梨県丹波山村の山奥にマウンテンバイクのコースを整備するために、RINTOで計測した3Dデータを利用。その結果、豊かな自然を思う存分に楽しめる村内トレイルが完成した。現在、丹波山村のふるさと納税の返礼品「【自然を満喫するトレイル体験】マウンテンバイクで走ろう」として提供されている。
ヤマハ発動機では、すでに日本全国から森林のデータを集めつつあり、社内では、それを活用した新たな取り組みの検討もはじまっている。川畑氏は、まだアイデア段階としつつも「希少猛禽類の生息地を守るために森林データを役立てる、といった使い方も良いですね」と笑顔を見せる。そして「このような展示会の機会があると、さまざまな業界からお声がけいただけます。これまで気が付かなかったようなヒントも得られるんです。ぜひそれらを新しい事業に活かしていければ、と考えています」と話していた。