帝国データバンクは1月26日、「2024年問題に対する企業の意識調査」の結果を公表した。「2024年問題」全般で「マイナスの影響がある」と回答した企業は59.9%、「影響はない」企業は22.3%、「プラスの影響がある」企業は1.6%であった。
2024年問題、約6割が「マイナスの影響がある」
このレポートは2023年12月18日~2024年1月5日、全国27,143社を対象に実施し、11,407社から有効回答を得た「2024年問題に対する企業の意識調査」の結果に基づく。
建設業や運送業、医師などでこれまで猶予されていた、時間外労働の上限規制が適用されることによって生じる人手不足や、輸送能力の低下などが懸念される「2024年問題」全般について尋ねたところ、「マイナスの影響がある」企業は59.9%であった一方で、「影響はない」と回答した企業は22.3%、「プラスの影響がある」という企業は1.6%であった。
物流の2024年問題に限ると、「マイナスの影響がある」企業は68.6%で、特に『卸売』(79.6%)や『農・林・水産』(78.9%)など6業界で7割超の企業がマイナスの影響を見込んでいる。企業からは「物流コストが増加すれば、製品単価の上昇につながり、景気は後退する」(繊維・繊維製品・服飾品卸売、大阪府)などの声があがっている。
一方で、「プラスの影響がある」と回答した企業も1.5%あり、「長い目で見れば自由な時間が増えるため、若い人も入りやすくなり、運送業界にとっても良いはず」(鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売、東京都)といった前向きな声が寄せられたという。
具体的な影響は「物流コストの増加」が最多
「2024 年問題」全般に対して具体的な影響を尋ねると、「物流コストの増加」が 66.4%で最多。次いで「人件費の増加」(41.0%)、「人手不足の悪化」(40.0%)、「配送スケジュールの見直し」(32.4%)と続いた。業界別では、「物流コストの増加」は『製造』(80.4%)、『卸売』(79.2%)、『農・林・水産』(75.2%)が高い。また、「配送スケジュールの見直し」は『製造』(45.7%)、『卸売』(45.6 %)、『小売』(36.4%)といった、主に荷主側となる業界で高かった。
物流の2024年問題に対して対応を行っているか聞くと、「対応あり」とする企業は62.7%で、「特に対応しない」企業は26.4%。さらに「対応あり」とした企業に具体的な対応策を尋ねると、「運送費の値上げ(受け入れ)」が43.3%で最多。次いで、「スケジュールの見直し」(36.3%)、「運送事業者の確保」(24.9%)、「発着荷主と運送事業者双方での連携強化」(24.2%)、DXなど「業務のシステム化や効率化の推進」(20.0%)が上位に並んだ。
2024年問題へ対応しない企業「どのように対応すればよいか分からない」
業界別では「運送費の値上げ(受け入れ)」は『運輸・倉庫』(51.5%)、『卸売』(50.2%)、『農・林・水産』(50.0%)が高い。そのほか、DXなど「業務のシステム化や効率化の推進」は、『金融』(44.4%)、『不動産』(28.3%)、『サービス』(27.5%)で高く、「ドライバーの確保・育成」では、『運輸・倉庫』が53.6%と突出して高かった。「荷待ち・荷役時間の把握・削減」は、『運輸・倉庫』が 32.4%で最多となり、『製造』(12.2%)、『農・林・水産』(9.1%)が続いた。
物流の2024年問題へ「特に対応しない」企業にその理由を尋ねると「これまで通りで問題が生じず、対応する必要がない」が34.6%で最多。続いて「2024年4 月以降、問題が生じた際に対応を検討する」(33.6%)、「自社だけでは対応策が検討できない」(27.5%)、「どのように対応すればよいか分からない」(15.8%)と続き、具体的な対策が見つからず、対応を決めかねている様子も表れている。
「2024年問題」全般に対して求める支援策や政策などについて尋ねると、補助金や助成金など「金銭的支援」(34.0%)と「人材育成・確保支援」(32.3%)が上位となった。以下、「高速道路料金などの見直し」(29.3%)や「時間外労働の上限規制の猶予期間の延長」(26.6%)、「ルールなどの周知徹底」(21.5%)が続いた。
一方で、自動運転やロボット技術など「新技術開発支援」は低位にとどまるが、「高速道路での自動運転の新技術開発など、単に補助金を出すことなどではなく、先を見据えた対策を支援する体制を国に設けてほしい」(メンテナンス・警備・検査、静岡県)といった前向きな意見も寄せられた。