NTTデータ経営研究所は12月18日、「デジタル給与払いの利用意向に関する意識調査」の結果を発表した。これによると、市場規模は約1兆3000億円、利用希望者数は約440万人とみられるという。
同調査は同社が9月5日~12日にかけて、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが提供するNTTコム リサーチへの登録モニターのうち20代~60代の就業している男女を対象に実施したものであり、有効回答者数は1万194人。
デジタル給与払いに関する認知度では、「知っており、内容も理解している」が全体の29%、「知っているが、内容は理解していなかった」が32%で、年代による大きな差は見られなかった。
この結果から、20代~60代の6割程度が少なくともデジタル給与について聞いたことがあるといえる。
デジタル給与「ぜひ使いたい」6%
デジタル給与の利用意向では、「ぜひ使いたい」が全体の6%、「どちらかといえば使いたい」が16%だった。「ぜひ使いたい」「どちらかといえば使いたい」の合計は、20代で35%、30代で26%、40代が21%、50代と60代が13%であり、若い世代ほどデジタル給与の利用意向が高い。利用意向の比率を基に、デジタル給与の受け取り希望者は全国で約440万人と同社は推計する。
毎月のデジタル給与受取希望金額と月収に占めるデジタル給与の割合を尋ねると、平均額は約8万3000円(年間で約100万円)、割合は平均で22.1%だった。
この結果からデジタル給与導入初期にデジタル給与払いとなる金額を同社が推計したところ、約1兆3000億円になるという。
デジタル給与の利用意向を地域別に見たところ、九州・沖縄、四国、北陸の順に高い。
使いたい・使いたくない理由とは?
デジタル給与の受け取りを希望する理由は、「銀行口座から現金を出す手間がなくなるため」「銀行口座から現金を出す際の手数料がなくなるため」「決済アプリにチャージする手間がなくなるため」が多く、既存の銀行口座受取での不満解消のためにデジタル給与の利用を検討する傾向が見られた。なお、理由に地域差は見られなかった。
勤務先がデジタル給与払いを導入した場合、受け取りに利用したい決済サービスを聞くと、PayPayが全体の50%を占め、以下、楽天ペイ、d払い、au PAYが続く。
選んだ理由は、「普段使っているため」が45%、「利用金額の還元等のキャンペーンが期待できるため」が19%、「運営企業に安心感があるため」が11%だった。
なお、給与の受取口座の選択に、キャンペーンなどのインセンティブを求める動きが見られたという。
デジタル給与の利用意向で「どちらかといえば使いたくない」「全く使いたくない」とした回答者に理由を尋ねたところ、「使うメリットが分からないため」が25%、「現状の銀行口座受取に不満がないため」が22%だった。デジタル給与を利用するメリットが十分に認知されていないと、同社は指摘する。
デジタル給与利用に消極的な回答者に、何があればデジタル給与を利用したいと思うか質問すると、「ポイント還元などが受けられた場合」が23.1%と最多であり、以下「どんなきっかけがあっても、デジタル給与払いは使わない」(23.0%)、「デジタル給与利用のメリットが明確になった場合」(21.6%)が続く。
これらの結果から、どんなきっかけがあってもデジタル給与を利用しない割合は全体の約16%となり、逆算して20代~60代の就業者の約84%にはデジタル給与を利用するポテンシャルが存在すると同社は見ている。
また、デジタル給与を利用するためのインセンティブを提供することで、デジタル給与利用者を増やすことができると同社は考える。
今回の調査結果を受けて同社は、「デジタル給与の導入に向けて動き出している資金移動業者は、自社サービスの利用者獲得のため、銀行口座受取との差を明確にしたマーケティング戦略の立案が求められます。特に、キャンペーン施策などの分かりやすいインセンティブを提供することで、他の決済サービスを利用していた顧客の獲得が期待できます」と分析する。
一方、「銀行にとってデジタル給与の普及は、資金流出の要因となる一方で新たなビジネス機会に繋がる可能性が考えられます。昨今地方銀行は、地域事業者に対して資金以外のサポートを行うことでエンゲージメントを高めています。このことから、地方銀行にとっては中小企業に対するデジタル給与の推進による新たな価値の創出が期待されます。中小企業は大企業と比べて、給与受取の仕組みを構築するための手続きやコスト面で導入に課題を抱えることが予想されます。地方銀行によるデジタル給与払いに向けたビジネス・マッチングなどのアドバイスによって、取引先企業の従業員満足度や新規事業創発に繋がれば、新たな資金ニーズの源となる可能性が考えられます」と提言している。