凸版印刷は9月29日、食品や日用品向け一次容器などに要求される衛生性・機能性・品質を実現するシーラント用リサイクルポリエチレンフィルムを開発したことを発表した。

日本政府が提唱するプラスチック資源循環戦略では、プラスチック資源について、2025年までにリユース・リサイクル可能な材質構成に置き換えること、2030年までに容器包装の6割をリユース・リサイクルすること、プラスチック資源の再生利用を倍増することなど、さまざまなマイルストーンが策定されている。

従来、包装用プラスチックフィルムメーカーにおいて製造時に発生する端材などは、一部自社工場内で再生利用を行う以外は、再生業者へと売却されてきた。しかし、既存の再生工場ではさまざまな原材料を加工するため、食品用途などに使用する一次包装材料としては、衛生面での課題や異品種混入リスクへの懸念から利用が進まず、最終用途はパレットや土木資材、一部の雑貨などにとどまり、包装用途への循環の例は少なかったという。

こうした背景から、衛生性が担保された包装用リサイクルシーラントは、資源循環の新たな具体策として、日用品業界や食品業界など多くの業界からニーズが高まっていた。そこで今回凸版印刷は、衛生面や機能面などの課題を解決し、従来のポリエチレンフィルムと同程度の品質を実現したリサイクルポリエチレンフィルムを開発したとしている。

新たなリサイクルフィルムは、食品や医療医薬品用途の製品を生産しており衛生性が担保された凸版印刷の工場において、再生樹脂化の専用検証設備を導入し、製造技術と生産方法を確立したもの。リサイクル原料(端材)を再生ペレットに変換し、フィルムメーカーとの連携により、シーラント用リサイクルポリエチレンフィルムに製膜するといい、そのフィルムにおける再生材比率は16%となるとする。また今後は一次包装用リサイクルシーラントとして、量産化に向けた検証を行うという。

  • リサイクルポリエチレンフィルムの製造スキーム

    リサイクルポリエチレンフィルムの製造スキーム(出所:凸版印刷)

同社は、一般的な多層構成のフィルムパッケージで最も重量比率が高いとされるシーラント部分を新製品に置き換えることで、パッケージ全体の再生材比率を10%以上にすることができるとする。さらに、従来から存在するリサイクルPETフィルムやリサイクルナイロンフィルムと組み合わせることで、多層構成フィルム容器の代表的な材質構成である「PET/接着剤/ナイロン/シーラント」をすべてリサイクル樹脂で構成することも可能だとした。加えて、従来品と比べてフィルムとして約12%、製袋品として約4%のCO2排出量削減を実現するとのことだ。

凸版印刷によると、同リサイクル素材については2023年10月より量産化に向けた検証を開始し、2024年10月から生産を開始する予定だという。同社は今後、多層構成フィルム容器のなかでも、シーラントの重量比率の高い詰め替えパウチなどを含む日用品業界を中心に提供を開始し、その後食品業界などへと展開することで、関連受注を含め2025年度に50億円の売り上げを目指すとしている。