中国商務部によると、同部の王文涛(王文濤)部長が8月28日に北京で、中国訪問中の米商務省のジーナ・レモンド長官と会談。米中対立が続く経済貿易問題に関する協議を経て、米中両国の商務当局間に新たな意思疎通に向けたルートの構築などで合意したという。

この合意に基づきて双方は次官や局長レベルの政府関係者や企業の代表なども加えた作業チームを設置し、年2回の次官級会合などを通じて具体的な経済面での課題解決の模索を図っていくとしている。またレモンド長官と王部長は恒常的に意思疎通を図っていくことでも合意し、毎年少なくとも1回の会談を行うことも決まったとしている。米国商務省からも同様の発表が行われている。

  • 握手を交わす米国商務省のレモンド長官と中国商務部の王部長

    握手を交わす米国商務省のレモンド長官と中国商務部の王部長 (出所:中国商務部)

中国商務部によると、王部長は米国の中国に対する通商法301条に基づく関税措置、半導体政策、双方向の投資制限、中国企業への制裁措置などに対する懸念として、「国家安全保障の一般化は正常な経済貿易関係にはマイナスであり、一方的な保護主義的措置を実施することは市場ルールと公平な競争の原則に合致せず、グローバルなサプライチェーンの安全と安定を損なう」とする中国側の態度を示し、米国が中国とのデカップリングは求めないと述べていることに触れ、それを実際の行動に移すことを願うと伝えたという。

一方の米国商務省によると、レモンド長官は、「米国の国家安全保障を守るために必要な措置を講じるという政権のコミットメントを強化し、輸出規制の対象は国家安全保障や人権に明らかな影響を与える技術に限定されている」ということを強調し、中国の経済成長を抑制するわけではないことを中国側に理解を求めたという。表現としては細心の注意を払ったものになっているものの、レモンド長官は、国家安全保障にかかわる対中半導体輸出規制に関しては議論の余地はないとしており、今後も規制を継続する態度を示した模様である。

なお、今回のレモンド長官の訪中を機に米中がビジネス面での協力に向けた対話の場が設定されることとなり、国家安全保障にかかわる半導体をはじめとするハイテク分野を除いて、今後の米中のビジネスにおける関係改善が促進する可能性が出てきたようである。