野菜の葉に感染して収量を減らす病原菌「うどんこ病」の感染拡大を菌に寄生するカビ(菌寄生菌)で抑制できることを、近畿大学のグループが明らかにした。環境へ負荷がかかる化学農薬(殺菌剤)に依存しない新たなうどんこ病の防除対策として、3年後をめどに実用化への道筋をつけたい考えだ。
うどんこ病はカビの一種で、農作物を中心に雑草や樹木など植物の葉に感染する。うどんの粉を振りかけたように白い斑点が発生することから名付けられた。葉から養分をとって葉を枯らしてしまうことから、植物が光合成を行うことができなくなり、農作物の収量を3割ほど減らすこともあると言われる。
近畿大学農学部の野々村照雄教授(植物病理学)らは、うどんこ病菌に寄生する菌寄生菌に注目。菌寄生菌がメロンやカボチャ、キュウリ、ズッキーニなどウリ科植物にのみ感染するメロンうどんこ病の感染拡大を抑制するかどうかを調べた。
実験では、まず、メロンの苗を用意し、顕微鏡でみながらガラス針をつかってうどんこ病菌の胞子を葉につけて感染させた。感染から5日目と10日目、15日目の苗をそれぞれ5つずつつくり、それぞれに菌寄生菌を混ぜた水を噴霧した。
その後、静電気を使った円柱状の機器で葉から出てくるうどんこ病菌の胞子を集め、数を数えた。
その結果、菌寄生菌を噴霧しない場合は、感染5日目頃からうどんこ病菌の胞子ができはじめて30日ほど胞子を出し続けた。ある個体の生涯胞子放出数は約12万個にも及んだ。一方、感染後5日目に噴霧をすると、胞子の放出はほぼみられず、生涯胞子放出数も288個に抑えられた。感染後10日目の噴霧でも効果が見られ、生涯胞子放出数は962個だった。ただ、感染後15日目の噴霧では生涯胞子放出数は7万個を超えた。
胞子の放出がピークを迎える15日目ごろの噴霧ではすでにつくられているうどんこ病菌の胞子の放出を押さえることはできず、感染初期での噴霧が効果的であることを示しているという。
実験の最後には、メロンうどんこ病菌の胞子を数えた葉を回収し、脱色と固定の処理をしたのちに、うどんこ病菌が胞子を生産、形成する分生子柄という構造体の数や形状を顕微鏡で確認した。5日目と10日目に菌寄生菌を噴霧した葉には、正常な分生子柄が見られなかった。15日目の噴霧では、約850個あったが、無処理のものでは約1400個あり、菌寄生菌がうどんこ病菌の胞子の放出を抑えていることが分かった。
農業でうどんこ病対策をするには、現状では殺菌剤を含む化学農薬を使うが、耐性菌の出現や残留農薬などの環境への負荷が高いという課題がある。野々村教授は「より効率的にうどんこ病菌を防除できる噴霧の仕方や、菌寄生菌の大量培養技術を確立して実用化することで、化学農薬のみに依存しない新たな方法となり得る」としている。
研究は4月25日付けのスイスの農業経営専門誌「アグロノミー」電子版に掲載された。
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