Arm Holding子会社であるアーム株式会社は今年4月3日、横山崇幸氏(Photo01)が新社長に就任した事を発表した。この横山氏による就任挨拶が4月21日に行われたので、その模様をご紹介したい。

  • Armへの入社そのものは3月末とのこと

    Photo01:発表は4月3日であるが、Armへの入社そのものは3月末とのこと

といってもまだ入社して1か月も経っていない、という時期だけに方針を立てると言っても具体的な話には当然ならないし、まだ主要な顧客廻りも終わっていないという段階だから、明確な指針を立てるにはまだ早い。

加えて言えば、今回はArm本体のIPOを控えてのQuiet Periodの時期に当たるため、IPO後の話などをすることも出来ない。結果的にふわっとした話にならざるを得ないのは仕方ないところであるが、そんな中で重点注力分野として挙げられたのがこちら(Photo02)である。

  • AIに関しては、ArmはEdge側のInferenceがメインであり、なのでIoTの中に含まれるとの事だった

    Photo02:これそのものはそれほど珍しい事ではない。逆に、ここにServerが入っていないのは、まぁ現状の国内メーカーを考えれば妥当な範疇である。ちなみにAIに関しては、ArmはEdge側のInferenceがメインであり、なのでIoTの中に含まれるとの事だった

元々横山氏は自動車関係に強い。略歴は先のリリースの先に示されているが、CSR時代とETAS(親会社はBosch)時代にずっと車載向けに携わっていた事もあり、車載のビジネスを長く経験されている。当然こうした経歴はオートモーティブ向けには有用である。具体的には、まず日本の自動車関連企業のSOAFEEへの加盟をさらに推進してゆきたいとしている。

2021年の発表の時点ではまだSOAFEE SIGも未発表状態だったが現在はWebサイトも公開されており昨年10月の時点でSOAFEEの加盟メンバーは50社を超えている。ArmとしてはSOAFEE経由で自動車業界との関係を深めてゆきたいと考えている訳で、このためにも国内メーカーを積極的にSOAFEE加盟に繋げてゆくのが大きな仕事の1つという訳だ。また、古いアーキテクチャで実装されているECUを最新のものに入れ替える、MCU Migration&Consolidation Programを日本メーカーに適用してゆくのも仕事の1つとして挙げていた。

それともう1つ横山氏が挙げておられたのが教育である。Armは本国ではEducation Programを立ち上げており、AFA(Arm Flexible Access)にもAcademia Accessが用意され、教育機関や研究機関がArmのIPを使ってチップを試作するといった事が容易に可能であるが、国内ではこうした取り組みが遅れている。理由の1つは国内の大学などで半導体チップを作るようなところが減ってしまった(研究室レベルではまだ色々存在するが、学部とか学科レベルではほとんど存在しない)事が上げられる。要するに学科向けにそういったプログラムを用意しても、受け皿となるべき教育機関が無いという状況がある訳だが、横山氏は在任中にこれに関しては何とかしてゆきたい、としていた。

在任中という繋がりで言えば、氏の職務の1つとして、きちんと自分の後継者を用意しておきたい、という事も挙げておられた。実際、前任の内海氏が辞任されたのは2022年10月の事であり、横山氏の就任までの半年間の空白があった。昨年11月に開催されたArm Tech Symposia TokyoでArm側の基調講演がWill Abbey(EVP、Chief Commercial Officer)氏とIan Smythe氏(VP、Product Marketing)の2人だったのはこれが理由でもある。また2020年12月にアームに着任されたBruno Putman氏は、2022年末に期限を迎えて帰国し、その後Armを辞められている。横山氏としては、自身が職を離れる際にはきちんと後継となる人材を育成して、空白期間がないようにしたい、という話であった。

なお、5月末から台北でCOMPUTEX/TAIPEIが開催予定である。Armは例年、このタイミングでコンシューマ向けIPを発表するのが常であり、今年も何かしら期待できるかもしれない。IPOの行く末も含めて、この先Armは色々変革が起きてゆくだろうし、そうした中での国内での舵取り役となるべき責任者がきちんと着任されたのは、アームにとっては幸いなことであろうと言うか、ギリギリそうした変革期に間に合ったと言うべきか。昨今ではRISC-Vという新しい競合勢力が国内でも明確に興隆している状況であり、これとどう戦ってゆくのかを含めて、今後の展開が楽しみである。