国立天文台は1月11日、「うみへび座TW星」を取り巻く原始惑星系円盤を観測したアルマ望遠鏡のアーカイブデータを用いて、感度がこれまでより10倍以上高い画像を作成してそれを解析した結果、円盤の中心近くにあるガスが出す電波からこれまでの感度でははっきりとはわからなかった特徴を捉えることに成功したことを発表した。

また、その特徴は惑星の大気のような、ガスの密度が非常に高い場所から放射される電波とよく似ていたことから、円盤の中心付近にあるガスの密度は惑星の大気と同じくらい高く、予想外に多く存在していることを確認したことも併せて発表された。

同成果は、総合研究大学院大学の吉田有宏大学院生らの研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。

惑星は、若い恒星を取り巻く原始惑星系円盤の中で形成されることが知られている。中でも木星のような巨大ガス惑星は、円盤中のガスを材料として誕生する。惑星の形成後は、残ったガスは円盤から外へと流れ出して、現在の太陽系のようにガスが存在しない惑星系になる。このことから、惑星系の形成過程を理解するためには、多種多様な原始惑星系円盤でのガスの量を測定することが必要だという。しかし、これまではさまざまな制約のために測定が進んでいなかったとする。

そこで研究チームは今回、うみへび座TW星を取り巻く原始惑星系円盤を観測したアルマ望遠鏡のアーカイブデータを用いて、感度がこれまでより10倍以上高い画像を作成し、解析を行うことにしたという。

  • うみへび座TW星を取り巻く原始惑星系円盤

    うみへび座TW星を取り巻く原始惑星系円盤。アルマ望遠鏡による観測データが画像化されたもの。中心の白色の部分が、今回の研究で明らかにされた大量のガスが存在する場所に対応する (C)T. Yoshida, T. Tsukagoshi et al. - ALMA (ESO/NAOJ/NRAO) (出所:NAOJ Webサイト)