IHI、商船三井テクノトレード、古野電気、アークエッジ・スペース、東洋信号通信社、日本無線、三井物産、笹川平和財団海洋政策研究所の8者は10月25日、次世代海上通信インフラである衛星「VDES」の社会実装を進めるため、衛星VDESコンソーシアム設立準備会合を経て2022年10月13日に総会を行い「衛星VDESコンソーシアム」を設立したことを発表した。

陸上に比して海洋におけるデジタル化の遅れが危惧されており、海上安全の向上を目的としたデジタル通信網整備の必要性が高まっている。VDESとはVHF Data Exchange Systemの略で、船舶・海洋を対象として双方向通信によるネットワークを構築することを目的としている。自船の位置などを通報する装置として、すでに船舶運航や海上交通管理において普及している船舶自動識別装置(AIS)を拡張したシステムで、AISに比べて最大32倍の通信レート(約300kbps)を有することから、「次世代AIS」と形容されることもある。

また、衛星を利用することで、全地球規模の船舶の安全・安心ならびに洋上業務をリアルタイムに連携することが可能になると考えられている。多数の衛星を協調させて運用する衛星コンステレーションの構築に向けて、国際的な取り組みが進められているという。

今回設立された衛星VDESコンソーシアムは、衛星VDESの利用促進を行うため、さまざまな分野の産学官が連携してビジネス化のためのプラットフォーム構築を行うことが目的とされており、この活動を通じて、海洋国家である日本のプレゼンス強化・海洋DX化に貢献できることが期待されているという。主な検討項目・活動内容として、ユースケースやビジネスモデル検討、地上VDES通信実験、実衛星利用サービス開発などを予定しているとする。

  • 衛星VDESに期待されるユースケースのイメージ

    衛星VDESに期待されるユースケースのイメージ (出所:プレスリリースPDF)

なお、10月13日に実施された衛星VDESコンソーシアムの総会では、規約の承認や役員の選出が行われ、正式な発足と活動の開始が宣言された。役員などは以下の通り。

  • 代表幹事:志佐陽氏(IHI)
  • 副代表幹事:佐野義浩氏(商船三井テクノトレード)、荻野市也氏(古野電気)
  • 事務局:笹川平和財団海洋政策研究所

また、衛星VDESコンソーシアムのアドバイザーとして、以下の通りの関連分野の有識者の参加も発表された(五十音順)。

  • 加藤光一氏(日本船舶技術研究協会 専務理事)
  • 佐藤徹教授(東京大学大学院 新領域創成科学研究科 海洋技術環境学専攻)
  • 柴崎亮介教授(東大 空間情報科学研究センター)
  • 庄司るり教授(東京海洋大学 理事/副学長兼任)
  • 角南篤客員教授(政策研究大学院大学 学長特別補佐兼任)
  • 中須賀真一教授(東大大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻)

今後は、衛星VDES普及を通した海洋DXの推進に向け、衛星VDESコンソーシアムの会員受付を11月から開始する予定としている。