富士通は9月14日、光1波あたり1.2テラビット毎秒(Tbps)の伝送が可能なデジタルコヒーレント光伝送技術の開発に成功したことを発表した。また、実際の光伝送装置として通信が可能なことも確認したという。

デジタルコヒーレント光伝送技術とは、光の波としての性質を利用して受信感度を向上させるコヒーレント受信方式と、超高速デジタル信号処理を組み合わせることで伝送性能を最大化させる光伝送技術だ。同社によると、今回開発した技術によって、光の波長一つあたりで1秒間に25ギガバイトのブルーレイディスク6枚分の情報の通信を実現できるとのこと。

同社は今回、「テラビット光伝送システム技術」「光伝送装置への水冷技術」「機械学習を用いた光ネットワークモニタ技術」の3つの独自技術を適用して、大容量伝送と低消費電力を両立する技術を開発した。同社の従来製品と比較して、システム全体の二酸化炭素排出量を70%程度削減も可能だとしている。

テラビット光伝送システム技術では、高速信号を伝送可能とするデジタル信号処理LSI(DSP)と狭線幅波長可変レーザを適用し、送受信デバイスや光伝送路に発生する光波長の歪を補償する技術を組み合わせることで、1波あたり1.2Tbpsの大容量伝送を実現した。

また、光伝送装置に水冷技術を適用しており、冷却効率を向上させたため伝送容量あたりの消費電力は120メガワットだ。光伝送装置全体では、空冷方式による従来の装置と比較して約3分の1の小型化も実現している。

  • 水冷技術の適用による小型化

    水冷技術の適用による小型化

その他、機械学習を用いたネットワークモニタ技術を活用したことで、光ファイバーや光伝送システムなどの光ネットワーク構成要素の状況を自動で分析することができるようになった。分析の結果をネットワーク構築時のDSPの変調方式や構成要素の設定に生かして、消費電力を抑えつつ光伝送装置が持つ伝送性能を引き出したネットワークの構築を実現する。

同社は今回開発した技術を適用した光伝送装置を、2023年度上期中に製品化し、グローバルに提供を開始する予定だという。