日本電信電話(NTT)は9月5日、1波長あたり1.2テラビット毎秒の光伝送を実現するデジタルコヒーレント信号処理回路および光デバイスを開発したことを発表した。デジタルコヒーレント技術とは、デジタル信号処理とコヒーレント受信と組み合わせた伝送方式を指す。

今回開発した技術は、光の偏波、振幅、位相をデジタルデータとして取り込み、信号処理によって光ファイバ伝送路や光電子デバイス中で発生する信号歪みを補償する、デジタルコヒーレント光伝送システムに適用される。

  • 開発した技術の概要図

    開発した技術の概要図

同社が今回開発した技術は、独自のデバイスを用いることで光信号の変調速度を140ギガボーまで高速化し、従来比で1.5倍となる1波長あたり1.2テラビット毎秒を実現しているという。また、800ギガビット毎秒の光伝送距離を2倍以上に拡大も可能だという。

デジタルコヒーレント信号処理回路においては、理論限界に迫る伝送性能を有する符号化変調技術と、低消費電力に大容量データのビット誤りを訂正できる前方誤り訂正技術を組み合わせることで、光デバイスが有する高速かつ広帯域性能の潜在力を最大限に引き出すフレキシブル符号化変調を実現している。

光ファイバ伝送の信号歪みを低消費電力に補正するアルゴリズムや、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)プロセスを活用することで、1波長あたり1.2テラビット毎秒のデジタル信号処理を実現しているとのことだ。

同社によると、この成果により、現在普及している商用光伝送システム(1チャネルあたり100ギガビット毎秒)と比較して伝送容量は約12倍に拡大され、ビットあたりの消費電力は1分の10にまで低減される見込みだという。同社が掲げるIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想におけるオールフォトニクス・ネットワークの実現に寄与する成果だとしている。

  • 今回の成果の位置づけ

    今回の成果の位置づけ