ソフトバンクロボティクスは、世界中のさまざまなAI・ロボット技術を集約した物流体験型施設「SoftBank Robotics Logistics Innovation Lab」を9月13日に千葉県市川市にオープンする。同社が持つネットワークと組み合わせ、物流の最適化を提案する物流自動化事業を開始する。オープン前日に報道関係者に公開されたので、一足先に内部の様子をお届けしたい。
記者会見に登壇したソフトバンクロボティクス 常務執行役員兼CPO ロジスティクス事業本部長の坂田大氏は「2024年問題も迫ってきており、物流業界の効率化と自動化は急務だ。世界の技術を集約し、物流を最適にしていく」と、意気込みを述べた。
同施設で真っ先に目を引くのが、高密度自動倉庫システムの「AutoStore (オートストア)」。商品の棚入れから、保管、ピッキングまでを効率化するシステムだ。
オートストアは、従来のように棚で在庫を管理し通路を歩いてピッキングするのではなく、専用のコンテナ(ビン)を格子状に組み上げ、隙間なく格納する。そして、グリッドの上をロボットが走行してビンを回収し、作業者が待つポートまでビンを搬送する。
オーダーが入ると、作業員はシステムから指示通りに作業を行うだけで棚入やピッキングが完了する。どの位置にどのビンがあるのかは、すべてオートストアが管理しているからだ。米国における顧客実績によると、オートストアの導入前後で保管効率は4倍、ピッキング数は3倍、出荷数は2倍向上し、人件費は50%削減できたという。
ソフトバンクグループは2021年4月に、同社のビジョンファンドを通じて、オートストアを提供しているノルウェーAutoStoreの株式の40%を28億ドルで買収。日本初のグローバルディストリビューターとして、ノルウェー本社と直接、日本市場開拓に向けた共同開発を進めているという。
坂田氏は「オートストアの成長速度に驚いている。最新のAI技術とアルゴリズムにより、オートストアのスループット(単位時間あたりに処理できるデータ量)は従来比4倍になった」と説明した。
また、「SoftBank Robotics Logistics Innovation Lab」では、オートストアと連動してピッキング・仕分けを自動化する次世代型ロボットソーター「t-Sort」や、正確な仕分けを省スペースでできるシャッターアソートシステム「SAS」なども展示されていた。
さらにARスマートグラスを活用して、作業の効率化を図るソリューションも展示している。独Picavi GmbHが提供するARスマートグラス「Picavi(ピカビ)」を使って、作業時に、目の前の光景とデジタル情報をレンズに重ねて表示する。同製品もオートストアを連携可能なので、オートストアが指示する情報をデジタルデータとして目の前に表示する。
腕につけるタイプのバーコードリーダーと併用することで、効率的なピッキングを行うことができる。作業者の疲労軽減につながるだけでなく、時間とエラー発生率を30%削減できるという。
ほかにも、荷積み・荷下ろし作業を自動化するデパレタイジングロボット「XYZ Robotics」や、商品の大きさを自動判別して梱包する自動梱包器、梱包後の検品を可能にするRFIDを活用したトンネル式のゲートなども展示されている。
梱包や検品を人手で行うとなると、どうしてもヒューマンエラーが発生してしまうが、RFIDを活用することでエラーがなくなり、ダブルチェックをする必要がなくなるという。
近年のEC市場の拡大により、物流への負荷は増大しており、AIやロボット技術の導入による自動化への注目は高まっている。グローバルインフォメーションの調査によると、世界の倉庫自動化市場規模は2021年時点で約80億ドルとも言われており、2028年には約148億ドル(年平均成長率9.2%)まで成長すると予測されている。
坂田氏は「倉庫内の各プロセスを自動化するだけでなく、全体を最適化していかなければならない。顧客の現状に合わせて、世界の技術を活用した物流ソリューションを提案していく」と語っていた。