NECは4月16日、2026年度に発行する有価証券報告書において、AIを活用して気候関連情報の収集・分析を行い、情報開示の効率化・高度化に取り組むことを発表した。この発表に伴い、同社はメディア向けにサステナビリティ情報開示(SSBJ基準)対応に関する説明会を実施した。
なぜ「サステナビリティ情報開示」が求められているのか?
今回紹介されたのは、日本で今後義務化が予定されているサステナビリティ開示基準(SSBJ)への対応を見据え、NEC自身の有価証券報告書での実践と、そこで得た知見をもとに、開示プロセスを支援する取り組み。
説明会に登壇したNEC サプライチェーンサステナビリティ経営統括部の井上信也氏は、「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)」を例に挙げ、環境問題が深刻化している現状を説明した。
「2025年9月のプラネタリー・バウンダリーの研究結果では、9つの指標のうち、7つの項目(気候変動・生物圏の一体性・土地利用の変化・淡水利用・生物地球化学的循環・新規化学物質・海洋酸性化)で境界を上回ったと報告されています」(井上氏)
また、世界経済フォーラム(WEF)が発行している「グローバルリスクレポート」においても、今後10年間においての環境関連リスクが上位を占め、極端な異常気象や生物多様性の喪失、地球システムの危機的変化などが、企業活動に深刻な影響を与えるという予測がされているという。
このように気候変動や自然資本の変化が企業活動や財務に与える影響が顕在化する中、投資家をはじめとするステークホルダーは、企業のリスク認識や対応状況について、透明性の高い情報開示を求めており、日本では、サステナビリティ開示基準委員会がSSBJを公表している。
気候変動については「気候関連開示基準(S2)」として、温室効果ガス排出量、気候関連リスク・機会、その財務インパクトなどの体系的な開示を求めている。
「SSBJ基準への対応に伴い、2027年3月期以降、一定規模以上の企業に対して有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示が義務化される予定です。一方で、開示に必要なデータの収集・整理・分析や社内調整に伴う負荷は大きく、多くの企業にとって課題となっています」(井上氏)
NECでもSSBJ基準への対応を考慮した際に「基準に関する資料が多く、読み解きや理解が難しい」「SSBJ基準は文章量だけでなく表現が難解」「再現性を担保するためには人員確保やスキルが必要」といった課題に直面していたという。
NECはAIで開示業務をどう効率化するのか
NECはAIにより開示業務の工数を最大93%削減できる可能性を示した。
こうした課題に先行して対応するため、同社は2026年度に発行予定の有価証券報告書において、S2の領域を対象に、AIを活用した開示プロセスおよび開示業務の効率化・高度化に取り組む。
今回の取り組みでは、AIを活用して「SSBJ基準の要求事項の整理と分析・評価」「社内外の関連情報の収集と分析・評価」「有価証券報告書への気候関連情報開示文章の作成支援」の3点を実施する。
「AIを活用することで、膨大かつ難解な基準の理解から情報の探索を経て、最終レポートまで高効率での業務サポートが可能です。社内での試行では、手作業中心の従来プロセスと比較して、工数ベースで93%の削減効果が得られるとともに、経験の浅い担当者でも一定水準の品質で作成できることを確認しました」(井上氏)
NECの開示支援サービスは何ができるのか
NECは自社の知見をもとに、開示業務支援サービスとして外部提供も進める。
同社は今後、これまでに蓄積したサステナビリティ情報開示のノウハウや知見を生かして、有価証券報告書における気候関連情報開示の業務支援サービスを2026年度に提供開始する予定。
さらに、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報開示について、AI活用の対象範囲をサステナビリティ開示テーマ別基準第1号「一般開示基準(S1)」へ拡大し、開示業務全体を支援する仕組みへ高度化していく方針。
あわせて、自律的にタスクを分解し、判断支援や実行を担うAgentic AIを適用することに取り組む。





