開発された新型ボルテックスチューブは、中空の螺旋状フィンを装置内に内蔵する点が特徴で、この形状のアイデアは、ドリル加工後の切粉形状から発案されたという。

  • 新型ボルテックスチューブ

    新型ボルテックスチューブ (出所:原子力機構Webサイト)

また、このフィンによって、以下のようなメリットが得られるとする。

  1. 吹き出す空気の温度をフィンがない従来型よりさらに-10℃ほど下げることが可能
  2. 従来型で標準とされた長さの半分以下の長さでも、冷却性能が落ちないため、装置全体を短縮・小型化でき、それにより軽量化も達成

考案された新型ボルテックスチューブの構造は、従来型と同じ単管タイプと、工作機械を用いた切削加工時の現場ニーズに基づいた、シンプルな多重管ストレートタイプの2種類が開発された。さらに、吹き出す空気の量が多いプロトタイプを開発し、一般的なコンプレッサーを所有する製造現場での実用化に見通しを得たという。

  • 新型ボルテックスチューブに内蔵された螺旋状フィンのイメージ

    新型ボルテックスチューブに内蔵された螺旋状フィンのイメージ (出所:原子力機構Webサイト)

装置改良に必要な装置内の熱流動現象を把握することを目的に、乱流数値シミュレーション技術が活用された。フィンを内蔵することで、乱流運動エネルギーが局所的に高い、“激しい乱流渦”を発生させられるようになる。そして調査の結果、それが冷却性能を向上させる重要な要因であることを確認することに成功したという。この乱流渦の発生位置、強度、散逸速度をフィンで制御することにより、装置の長さが短くても冷却性能が高いボルテックスチューブを実現したと研究チームでは説明している。

なお、今回開発された新型ボルテックスチューブについては今後、機械加工工場や電子部品のスポット冷却など、さまざまな産業利用を想定し、広く社会で利用してもらえる製品として提供していくことを研究チームでは考えているとしている。