台湾のファブレスIC設計会社によると、中国の複数ファウンドリが最近、成熟プロセスでのウェハ受託製造価格を10%以上引き下げたことを受け、台湾ファウンドリ各社も受注を維持することを目的に、特定プロセス限定ながら10%程度の値引きを開始したと台湾メディアが報じている。ロシアのウクライナ侵攻の長期化や世界的なインフレで、消費者向け電気製品の需要が低迷し、成熟プロセスに対する生産委託が減少しているためだという。

成熟プロセスを提供する中国の代表的なファウンドリとしてはSMIC、Hua Hong、Jinghe、Hejianなどが挙げられる。一方の台湾の成熟プロセスファウンドリとしてはTSMC傘下のVangard International Semiconductor(VIS)、UMCなどがあるが、彼らは決算発表前のクワイエット・ピリオドのため、価格動向など市場の観測にはコメントできないとしている。

TSMCは、すでに7月14日に開催した決算説明会の席にて、売り上げの中心はHPCなどに向けた先端プロセスであり、消費者向け製品の需要低迷の影響は受けないが、2023年上半期まで顧客の在庫調整は続くとの見方を示していた。また、Powerchip Semiconductorは、2022年第3四半期の稼働率が5~10%ほど低下する可能性があるが、値下げの計画はいまのところないとしている。ただし、同社は、新竹科学工業園区に成熟プロセスを採用する300mmファウンドリの建設を進めているが、人手や部材不足や装置の搬入遅延で工事が遅れており、2024年下期時点の生産能力を従来計画の3万5000枚から1万9000枚に減らすことにしたとしている。

なお、台湾の半導体業界関係者によると、小型の液晶パネル用ドライバICの価格は、2021年末比で20%以上下落しているほか、TDDI(タッチコントローラとディスプレイドライバを統合したIC)も、一部製品を除き10%以上下落しており、特にフルハイビジョン液晶ディスプレイ向けTDDIの価格下落が大きいという。