英Omdia主催、経済団体連合会後援の半導体産業動向紹介イベント「Global Semiconductor Day Spring 2022」が「ポストコロナのグローバル半導体産業・最新動向」をメインテーマに5月26日にオンラインで開催された。

新型コロナウイルス感染症のさらなる拡大、ウクライナ問題、カーボンニュートラル、SDGs、各国の半導体産業育成政策、メタバース、世界的な半導体不足の長期化など、半導体産業を取り巻く環境は激変している。今回は半導体産業を巡る全体像および2022年以降の半導体市場の新たな成長について紹介する講演が相次いだ。

主催者Omdiaのシニアコンサルティングディレクタの南川明氏が「世界のDX/GXで半導体需要はどこまで成長するか」と題して講演を行ったほか、同じくコンサルティングディレクターの杉山和弘氏が「2022年の注目市場動向分析、動き出したDX/GX投資を紐解く」と題した講演を行った。

かつてのPC/TVの時代、スマホの時代から現在はデータセンタやDX/GX投資による高度成長期に入っており、個人消費の時代からインフラ投資への国家消費が始まっている。また、DX/GXに加えて、メタバースが今後の半導体需要を大きく伸ばすことが期待されるほか、GX分野では太陽光発電・風力発電向けパワー半導体、産業機器向けモーターのインバータ化、産業IoT向けセンサやAI活用、EV/HEVのパワー半導体などの成長が期待されるといった話が取り上げられた。

今回のOmdiaの講演で、新たに公開された内容を以下に箇条書きで示す。

  • 世界半導体産業は、2021年は最終的には前年比24.2%増の成長となった。2022年は、以前予測の同6%台の成長から同9.0%増へとOmdiaは上方修正した。需要上振れ要因は、今後のデータセンタ向け投資拡大(DX投資拡大およびNAND価格高騰)、VR機器の成長によるところが大きい。コロナ特需のピークは越えたため、民生機器(TV)およびPC関連は需要停滞している。
  • 半導体不足は、車載市場向けは2022年第2四半期には不足感は無くなってくるとみている。コロナ特需製品の一服感も出てくる。データセンタ市場も2022年第2四半期までは半導体不足の影響が続くが、第3四半期以降回復へ向かう見込みである。
  • 今後、車載およびデータセンタ市場が成長し半導体市場を牽引していく。
  • 車載半導体については、ロシアのウクライナ侵攻、中国のロックダウン、世界的な金利、物価上昇の影響から車両生産台数は前年並みにとどまる可能性がある。
  • ロシアからのエネルギー供給廃止から、EV化がスローダウンする可能性があるが、現状は予定通りの予測をしている。ECU(車載電子制御ユニット)向け半導体は、ADAS、HEV、I&Tの推進から2026年まで年平均成長率15%で成長する見込みである。デバイス別では、ロジック(ADAS)、メモリ、ディスクリート、アナログが成長する見込みである。
  • データセンタ市場は、地政学、経済的リスクに関係なく2022年は、買い替えサイクルおよび新プロセッサ導入により成長する。エッジのデータセンタ需要は、メタバース推進もあり、さらに成長する見込みである。ハイパースケールCSP(クラウドソリューションプロバイダ)を中心に新たなコンピューティングシステムの導入が加速し、高速化、Co-Processor化、バーチャル化が進む。
  • x86に対抗するArm、RISC-Vの攻勢が推進する。

Omdiaの発表のほか、経済産業省 商務情報政策局情報産業課長の西川和見氏が「これまでの半導体産業戦略と今後の製造基盤強靭化に向けて」と題して講演を行った。日本の半導体産業復興戦略については既報のとおりであるほか、5月に来日した米バイデン大統領と日本の岸田総理大臣の首脳会談や共同声明で触れられた半導体に関する合意事項についても既報のとおりであった。