日本マイクロソフトは6月1日、中堅中小企業向けのセキュリティツール「Microsoft Defender for Business(ディフェンダーフォービジネス)」の提供を発表した。同日にはプレス向け説明会がオンラインで開催され、同製品の特徴と同社の日本の中堅中小企業支援の取り組みが紹介された。

同製品は、Microsoft 365 Business Premiumの一部の機能を単一の製品として提供するもので、大企業向けに提供してきたEDR(Endpoint Detection and Response)の機能などを有したエンドポイントセキュリティサービスとなる。1ユーザーから購入が可能で、提供価格(税込、参考価格)は月額363円/1ユーザーとなる。なお、実際の販売価格は販売店によって決定される。

  • 「Microsoft Defender for Business」の概要

Microsoft Windows 10、Microsoft Windows 11にビルトインされているため、Windows Updateの適用のみで同製品を利用できる。また、通信データは1日5メガバイト程度になるため、PCへの負荷がかかりにくいという。

日本マイクロソフト 執行役員 常務 コーポレートソリューション事業本部長 兼 デジタルセールス事業本部長の三上智子氏は、「近年、増加傾向にあるサイバー攻撃の脅威に対して、中堅中小企業は人材不足やコスト負担などのリソース不足を理由に対策を強化できずにいる。中堅中小企業がサイバーセキュリティにより取り組みやすくなるよう、同製品は導入しやすい価格帯に設定した」と説明した。

  • 日本マイクロソフト 執行役員 常務 コーポレートソリューション事業本部長 兼 デジタルセールス事業本部長 三上智子氏

同製品は、Windows OS標準搭載のMicrosoft Defenderと併せて利用する。脅威のトレンド情報や他のメーカーのソフトウェアの脆弱性を管理する機能のほか、ルールに基づいた特定のプログラムやソフトウェア動作のブロック、スキャン実施状況やウイルス対策状態の統合管理、脅威を検知した際の自動検知、アラートのメール送信、AI(人工知能)を活用した自動調査・修復などの機能が利用できる。

今後、日本マイクロソフトは製品提供と併せて、10社の販売パートナーと協業してセキュリティ相談窓口やSOC(Security Operation Center)サービスを開発・提供する予定だ。

日本マイクロソフトは、これまで中堅中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に向けて、「ハイブリッドワークの推進」「ビジネスプロセスのデジタル化」「スタートアップ企業との連携」に取り組んできている。説明会では、それらの取り組みの進捗状況や成果も紹介された。

  • 中堅中小企業のDX推進支援に向けた日本マイクロソフトの取り組み

ハイブリッドワークの推進では、主にMicrosoft Teamsの利用促進や企業のDX相談窓口を通じた情報提供などに取り組んできたという。

三上氏は、「日本の中堅中小企業でもクラウドシフトが進んでいるが、当社の調査では東京とそれ以外の地域については25ポイントの差があることがわかった。お客さまの話を聞くと、『どこから手を付けていいかわからない』『相談先がみつからない』などの声も多かったため、2021年にITよろず相談センターを開設した。1年で2万社の企業とやりとりして、DXの支援ができた」と振り返った。

ビジネスプロセスのデジタル化にあたっては、中堅中小企業がMicrosoft Teamsと併せてデジタルツールを利用できるよう、Microsoft Teamsと連携できるSaaS(Software as a Service)を増やしてきた。2021年6月からの1年間で200社のISV(独立系ソフトウェアベンダー)のサービスをMicrosoft Azure上に構築し、現在は540社のISVのサービスが利用できるという。

このほか、既存のサービスにはないソリューションを中堅中小企業に提供するため、スタートアップ企業との連携も進める。2021年6月には、スタートアッププログラムを通じた連携を5年間で500社までに拡大する目標を掲げたが、この1年間で248社が参画したことから目標を上方修正。2026年6月までに1000社のスタートアップとの連携を目指す。

  • 日本マイクロソフトは、2026年6月までに1000社のスタートアップとの連携を目指す

「これまでは当社から連携を打診してきたが、認知が広がったおかげでスタートアップから声をかけてもらえるようになった。今後も連携を進め、日本全体のDXに貢献していきたい」と三上氏。

また、三上氏は、地域のDX相談や簡易コンサルティングを提供窓口である「Microsoft Base」を現在の17拠点から、2023年6月までには全国47都道府県にまで拡大する方針も示した。