電子情報技術産業協会(JEITA)の半導体部会は5月19日、経済産業省 商務情報政策局 情報産業課に対して、「国際競争力強化を実現するための半導体戦略 2022年版」と題する提言書を提出したと発表した。

同部会は、現在の半導体産業のおかれた環境について「デジタル社会において、半導体は必要不可欠な製品であり、国家の命運を担うといっても過言ではない。世界の市場規模は約60兆円を超え、世界経済はもちろんのこと、国民生活にも多大な影響を及ぼすことから、国家安全保障の見地からも極めて重要な製品として位置づけられている。また、カーボンニュートラル社会を実現するにあたってもあらゆる場面で重要な役割を担っている。そのため、主要各国政府による自国の半導体産業への大型支援が相次いでおり、半導体の国内生産率の向上や安定供給を目的としたサプライチェーンの構築・強靭化などが世界中で強力に推進されている」と分析したうえで、日本政府に対して以下のような支援を要請している。

  1. 新時代のサプライチェーン構築やカーボンニュートラル、次世代計算基盤の確保に向けての支援(日本が競争力を有する半導体(メモリ、センサ、パワー半導体、マイコン、アナログIC)への支援。サプライチェーン強靭化のための同盟国による連携などの支援。カーボンニュートラルに向けた、デジタル化、グリーン関連投資を支えるキーコンポーネントとしての支援)
  2. 国際的な半導体支援策の潮流への対応(国家安全保障の観点から主要国・地域が進める半導体産業の維持、強化に日本が出遅れることのないよう、それら主要国・地域の補助金に比肩する支援)
  3. 新たな時代の研究開発体制と支援(基礎研究と製品開発をつなぐ最新設備をもった研究機関設立のお願い。次世代半導体の開発支援)
  4. イコールフッティング(税制、他)(日本における電気料金や償却資産税などの負担の軽減)
  5. 半導体の人材育成と獲得(初等教育から大学まで人材育成が必要であり、半導体に関するカリキュラム導入などのお願い)
  6. 半導体に関する諮問委員会の設置(半導体戦略を議論る産官学による諮問委員会の常時設置に関するお願い)

なお、今回、提言書を提出した目的と背景について、半導体部会長の宮森高氏(東芝デバイス&ストレージ取締役、デバイス&ストレージ研究開発センター長)は、「日本の半導体産業はCMOSイメージセンサ、NAND型フラッシュメモリ、パワー半導体、自動車向けMCU、アナログICなどの分野において高い国際競争力を保持している。一方、主要各国政府による自国の半導体産業への大型支援が相次ぐ中で競争環境は苛烈になっており、競争力の維持・向上のためにはより一層の官民連携が求められている。今回の提言は半導体産業として、いまの社会はもとより未来の社会のために産業を挙げて貢献をする決意表明であり、そのために日本政府のさらなる支援を要請するものです。半導体分野における官民連携の深化は、日本におけるデジタル社会の発展に大きく貢献するものと確信している」と述べている。