来年には2回目のミッション

アクシアムはまた、2023年にも次の民間宇宙飛行ミッション「Ax-2」の実施を計画している。

Ax-2ミッションでは、元NASA宇宙飛行士で、現在はアクシアムのコンサルタントを務めるペギー・ウィットソン氏と、元レーシング・ドライバーのジョン・ショフナー氏の参加が発表されている。この2人はAx-1のバックアップ・クルーも務め、もし今回飛行したクルーが病気などで飛行できなくなった場合に備え、同じ訓練を受けていた。

Ax-2ミッションにはこのほか、2人の参加も予告されているが、それが誰なのかはまだ明らかになっていない。俳優のトム・クルーズ氏と映画監督が参加し、宇宙で映画を撮影するという噂もある。

5500万ドルという高額にもかかわらず、関心は高いとしており、今後も最低2回のミッションの実施を予定しているという。

アクシアムはまた、宇宙ステーションのモジュールの開発も行っている。現在、イタリアの航空宇宙メーカーであるタレス・アレニア・スペースと共同で建造中で、2024年後半に打ち上げられ、ISSに結合し、追加の実験場、生活空間として使われる予定になっている。

さらに将来的には、複数のモジュールや太陽電池パドルなどを結合させ、そしてISSから切り離し、独立した宇宙ステーションとして運用することも目指している。

  • Ax-1

    ISSに結合された、アクシアムのモジュールの想像図 (C) Axiom Space

ISSは、初期のモジュールの打ち上げから約20年が経過し、老朽化が進んでいる。また最近では、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、欧米諸国やロシアとの関係が悪化しており、ISSの運用継続に対する懸念も高まっている。

NASAはかねてより、ISSを2030年まで運用するとともに、その後継機となる新しい宇宙ステーションを民間主導で開発・運用させる計画を進めてきた。アクシアムはそれを担う一社と目されているほか、NASAではジェフ・ベゾス氏の宇宙企業ブルー・オリジンや、ナノラックス、ノースロップ・グラマンといった企業とも契約を結び、新しい宇宙ステーションの構築に向け本腰を入れつつある。

NASAは、宇宙ステーションの運用を民間に委ねることで、宇宙旅行から宇宙での研究・実験、新しい素材や薬の開発や製造などといった商業化を推し進め、宇宙ビジネスを振興するとともに、NASA自身は有人月探査計画「アルテミス」や、月周回有人拠点「ゲートウェイ」の建設、そして有人火星探査に注力することを計画している。

今回のAx-1ミッションは、そんな時代に向けた第一歩となるものである。これまで宇宙に行けたNASAの宇宙飛行士や、宇宙旅行者に加え、民間宇宙飛行士が宇宙へ行き、そして仕事をする。数年後には当たり前になっているかもしれない光景の始まりを、私たちは目撃しているのである。

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    ISSに接近するAx-1 (C) SpaceX/NASA

Ax-1のクルー

  • Ax-1

    Ax-1のクルー。左から、ラリー・コナー氏、マイケル・ロペズ-アレグリア氏、マーク・パシー氏、エイタン・スティベ氏 (C) Axiom Space

マイケル・ロペズ-アレグリア(Michael Lopez-Alegria)

1958年、スペイン生まれ。米国に移住し、米海軍に入隊。1992年にNASA宇宙飛行士候補に選ばれ、1995年にスペースシャトルで初飛行した。その後、2000年と2002年にもシャトルで飛行したほか、2006年にはロシアのソユーズでも飛行するなど、ベテラン宇宙飛行士だった。

2012年にNASAを退職したのち、2017年にアクシアム・スペースに入社。同社副社長を務めるほか、その経歴や経験を活かし、同社所属の民間宇宙飛行士も務める。

Ax-1は彼にとって5回目の宇宙飛行となる。同ミッションではクルー・ドラゴンのコマンダー(船長)を務める。

ラリー・コナー(Larry Connor)

1950年、米国生まれ。不動産投資会社の代表を務めるほか、曲芸飛行パイロットの経験も持つ。Ax-1ミッションでは、民間人でありながら、クルー・ドラゴンのパイロットを務める。

エイタン・スティベ(Eytan Stibbe)

1958年、イスラエル生まれ。元イスラエル空軍でF-16のパイロットだった経歴をもち、現在は投資家、慈善家として活動。また、イスラエル人初の宇宙飛行士で、2003年にスペースシャトル・コロンビアの事故で亡くなったイラン・ラモーン氏と親しい友人だったという。

Ax-1ミッションではミッション・スペシャリストを務め、打ち上げから帰還までの間、機体の管理や、タイムラインやテレメトリー、消耗品のモニタリングを担当し、船長やパイロットを補佐する。

マーク・パシー(Mark Pathy)

1971年、カナダ生まれ。投資家で慈善家。カナダ人として宇宙に行く12人目となる。Ax-1ミッションではスティベ氏と同じくミッション・スペシャリストを務める。

参考文献

Axiom Private Astronauts Headed to International Space Station | NASA
Axiom Space - World’s First Commercial Space Station
AX-1 MISSION - SpaceX - Updates
Dragon Endeavour with Ax-1 Crew Approaches Station - Space Station