早稲田大学(早大)は12月9日、液状の食べ物を口の中に含んで(ゆっくり味わって)、あるいはよく噛んでから食べると、普通に飲み込む場合と比べて、食後90分間にわたりエネルギー消費量が増加することを確認したと発表した。

同成果は、同大スポーツ科学学術院の林直亨 教授および医薬基盤・健康・栄養研究所の濱田有香氏の研究グループによるもの。詳細はNature Publishing Groupのオンライン科学雑誌「Scientific Reports」に掲載された。

林教授らの研究により、これまでに固体の食べ物では、食べる速さが早く、飲み込むまでの咀嚼回数が少ないほど、体重やBMIが増加傾向になることが報告されており、その要因として、早食いによる過食、早食いが食事誘発性体熱産生量(DIT)を減らす、といったことが考えられている。

しかし、これらの研究では、飲み込む際の食べ物がかみ砕かれた、飲み込む前の塊(食塊)の大きさがDITに与える影響を排除することができなかったという。そこで今回の研究では、液状の食物を用いて、固体の食物と同じ現象が起こるのかどうかを検証したとするほか、飲料を摂取する際でも、ゆっくり味わい、良く噛むことがDITの増加をもたらすかどうかの検討も行ったという。

  • 咀嚼実験

    今回行われた実験の概要 (出所:早大Webサイト)

その結果、飲料20mLを30秒間口に含んだ後に飲み込むことを10回繰り返した「Taste試行」では、対象試行よりも有意に高い値を示すことが確認されたほか、30秒間口に含んでいる間、1秒に1回噛んでから飲み込むことを10回繰り返す「Chew試行」では、ほかの試行よりもDITの値が有意に高い値を示すことを確認。味わうことに、咀嚼することが加わると、さらにDITを増加させることが示されたという。

  • 咀嚼実験

    各試行結果の比較。3つの試行が行われ、すべての統計的な有意差が観察されたという (出所:早大Webサイト)

固形食のみならず、液状の食べ物であっても、ゆっくり味わい、よく噛んで摂取することで、DITを増加させられることを示すものであるほか、飲料でも固形食と同程度のDITが得られることが示された今回の結果について研究グループでは、「ゆっくり味わって、よく噛んで食べること(咀嚼すること)」が食後のエネルギー消費量を増加させることの科学的論拠となるとしており、咀嚼を基本にした減量手段の開発に今後役立つことが期待されるとしている。

また、そのメカニズムとしては、褐色脂肪細胞においてより多くのエネルギーが消費されているのではないかと予想されるものの、現時点では推測の域を出ないとしており、今後、咀嚼することがエネルギー消費量を増加させるメカニズムを明らかにする研究を行う必要があるとしている。