国宝「鳥獣人物戯画(鳥獣戯画)」。人間のように2本足で立つカエルとウサギが相撲をとったり、サルがウサギやカエルに追いかけられるといったユーモラスな絵を教科書などで見て覚えている人も多いだろう。
しかし、それを所蔵しているのが京都市にある栂尾山 高山寺であること、甲乙丙丁の4巻組として存在していること、各巻がどれほどの長さの巻物で、どのような順番で描かれているのか、といったことを知っている人はどれくらいいるだろうか。
2021年4月13日~5月30日にかけて東京国立博物館 平成館で開催される特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」は、そんな意外と知っているようで知らない鳥獣戯画のすべてを知ることができる内容となっている。
その最大の見どころは、展覧会史上初の試みとなる、甲乙丙丁4巻のすべての場面を見ることができる点。各巻の要所要所には絵の解説なども添えられ、初めて見る場面でもわかりやすくなっているほか、断簡と呼ばれる元の巻物などの一部を掛幅(掛軸)などに仕立て直したものや、原本を書き写した模本なども併せて展示。断簡や摸本の中には現在、国宝として指定されている鳥獣戯画から抜けて存在していない絵が含まれているものなどもあるが、今回、それらを組み合わせ、かつての姿を再現したものも見ることができる点なども見どころと言えるだろう。
また、鳥獣戯画を所蔵する高山寺にもスポットがあてられている。中でも高山寺の「中興の祖」とされる鎌倉時代の僧・明恵上人のその人となりに関する国指定重要文化財なども多数展示されており、まさしく鳥獣戯画のすべてを知ることができる内容となっている。
さらに展覧会でおなじみの音声ガイドも一工夫されており、単に音声で説明されるだけではなく(ナビゲーターは山寺宏一氏が、相方のウサギ・子犬役は恒松あゆみ氏がそれぞれ担当している)、ディスプレイ上に見どころの映像が表示され、より展示物の内容を理解しやすいようになっているが、ディスプレイの映像に注意が行ってしまい、せっかく目の前に本物があるのにそちらまで目が行かない、ということにもなりかねないので、その点は注意しておく必要があるだろう。
このほか、こちらも展覧会ではおなじみの売店では鳥獣戯画の名場面を活用したさまざまなグッズの販売がされているほか、お約束のカプセルトイも設置されている。また、公式図録は実物の90%というほぼ原寸大で4巻すべてを収録しているため、478ページというかなり分厚いものとなっており、これを買うだけでも価値がある(価格は3000円)と言える。
なお、入場は事前予約制(日時指定券)となっているため、先にオンラインでの事前予約が必要。同展の開催概要は以下の通りとなっている。
- 会期:2021年4月13日~5月30日(月曜休館、ただし5月3日は開館)
- 会場:東京国立博物館 平成館(東京・上野)
- 開館時間:9:00~19:00(最終入場は18:00、「鳥獣戯画 甲巻」の待機列には18:30分以降は並べなくなることに注意。総合文化展は9:30~17:00、特別展観覧当日に限り総合文化展の観覧も可能。その場合は総合文化展の日時指定券を予約する必要はなし。ただし、混雑状況次第では入場を待つ必要が生じる場合あり)
- 観覧料金:一般 2,000円、大学生 1,200円、高校生 900円、中学生以下無料(中学生以下、障がい者とその介護者1名は無料だが、オンラインでの「日時指定券」の予約は必要。入館の際に学生証、障がい者手帳等を提示が必要となっている。また、東京国立博物館キャンパスメンバーズ会員の学生の方は、割引料金で観覧が可能。その場合は、事前に「無料日時指定券」を予約し、入館の際に正門チケット売場(窓口)にて、キャンパスメンバーズ会員の学生であることを申し出、学生証の提示して割引価格でチケットを購入する必要がある)