日本金属は12月15日、リチウムイオン電池のデメリットを解消する次世代電池として期待されるマグネシウム合金二次電池向けに新たに開発した「マグネシウム合金二次電池負極用新合金」のサンプルを、2021年1月より企業や研究機関の開発者向けに試験提供することを発表した。

マグネシウム合金二次電池の主な特長は、以下の通り

  • 体積あたりの容量が大きい(マグネシウムは2価のカチオン)
  • リチウムやコバルトに代表される二次電池用金属資源の枯渇問題が無い
  • リチウムイオン電池で問題となっているデンドライト成長による発火の危険性が低い
  • 融点が650℃と高いため、150℃以上の環境下でも使用可能であり、かつ安全性が高い
  • セパレーターや筺体の低廉化が期待でき、電池としての低コスト化が見込まれる

従来のマグネシウム合金二次電池の開発においては、負極材料のほとんどは、純マグネシウムあるいはAZ31合金(Al:3%含有、Zn:1%含有)が使用されてきたが、これらは電池活性が低く、実用的な性能が得られない状況であったという。そこで、同社は電池活性を高めた負極材料の開発に向け、埼玉県産業技術総合センター(SAITEC)および中央工産との共同で研究開発を進めてきたという。 具体的には、Cu添加合金を採用。マグネシウムとCuの金属間化合物であるMg2Cuの粒子状析出物が存在し、充放電の核になるため優れた性能が得られるようになったという。従来合金(AZ31)と今回開発した合金の電流密度と酸化還元電位の関係を比較したところ、Cu添加合金では高い電流密度まで安定した充放電ができるのに対し、従来合金では充電不能であることが示されたほか、充放電後の電極表面には、Mg2Cuの粒子状析出物に起因する粒状の化合物が観察され、これが繰り返しの充放電を可能にする核となっていると推察されたとしている。

  • マグネシウム二次電池

    AZ31B(左)とCu添加合金(右)の電流密度と酸化還元電位の関係

また、結晶方位を制御した合金に電池活性が高い結晶面を電極面に揃えることで、電池活性を向上できることも見出したという。さらに、マグネシウム合金二次電池で唯一、高速の充放電が可能であることが確認されている活性炭を正極に用い、今回開発した合金を負極にすることで、従来にない速い速度で200回の充放電の繰り返しが可能なことも確認したという。

  • マグネシウム二次電池

    正極に活性炭素を用いた場合の充放電特性(左)と充放電後の電極表面(右)

なお、サンプルとして提供されるのは、はがきサイズ(厚さ0.2mm)のCu添加マグネシウム合金圧延材が数枚とのことで、同社では、今回、マグネシウム二次電池の開発者向けに負極材サンプルの試験提供を行うことを通じて、関係各所の連携が深まり、実際に電池を製作し、性能を評価してもらうことで開発が推進され、マグネシウム合金二次電池の製品化の加速につなげていきたいとしている。