市場動向調査会社である台TrendForceは、2021年のICT分野における10大トレンドについての予測結果を発表。3D NANDの150層超え、6Gの模索、自動運転の進展といった次世代技術に注目が集まるとした。
1. 半導体:DRAMのEUV採用が進み、3D NANDは150層超えへ
Samsung Electronics、SK Hynix、Micron Technologyの主要DRAMサプライヤ3社は、1Z-nmおよび1α(あるいは1A)-nmプロセス技術への移行を継続するだけでなく、2021年にはSamsungが先駆けてDRAMにEUVプロセスを導入する。これを受けて他のDRAMサプライヤも徐々にコスト構造と製造効率の最適化のために既存のダブルパターニングからEUVへと移行することとなる。
3D NANDは、2020年に100層超えを達成した後、2021年に150層以上を目指し、シングルダイのメモリ容量を256/512Gbから512Gb/1Tbに向上させる予定である。また、2021年はPCIe Gen 4が市場に浸透し始める年となる
2. 5G/6G:日本/韓国は6Gに注目
モバイルネットワーク事業者は2021年に大規模な5Gスタンドアロンアーキテクチャ(SA)を実装することが期待されている。5G SAアーキテクチャにより、事業者は高速かつ高帯域幅の接続を提供するだけでなく、ユーザーアプリケーションに応じてネットワークをカスタマイズし、超低遅延を要求するワークロードに適応できるようになる。
5Gの展開が進む中、日本のNTTドコモと韓国のSKテレコムは6Gの開発に注力している。6Gは、xRのさまざまな新しいアプリケーション(VR、AR、MR、8K以上の解像度を含む)、ホログラフィック通信、在宅勤務、リモートアクセス、遠隔医療、遠隔教育などと相性が良いとされている。
3. AI/IoT:AIの進化でモノのインテリジェンス化が進む
2021年には、AIとIoTの統合でモノのインターネットからモノのインテリジェンスに進化する。ディープラーニングやコンピュータビジョンなどのツールの革新により、IoTソフトウェアおよびハードウェアアプリケーションの全体的なアップグレードが実現する。業界のダイナミクス、経済刺激、およびリモートアクセスの需要を考慮すると、IoTは、特定の主要な垂直市場、つまりスマートファクトリとスマートヘルスケアで大規模に採用されると予想される。
スマートファクトリでは、AIの進化により、ロボットやドローンなどのエッジデバイスにさらに高い精度と検査機能が装備され、自動化が自律化に変わる。一方のスマートヘルスケアでは、AIの採用により、臨床上の意思決定プロセス、遠隔医療、および外科支援アプリケーションのサポートなどが可能となり、より手軽に医療の恩恵を受けることが可能となる。
4. AR:ARメガネとスマートフォンの統合が進む
2021年は、スマートフォン(スマホ)がARメガネのコンピューティングプラットフォームとして機能するようになることが予想される。
このクロスプラットフォームにより、ARメガネのコストと重量を削減できるようになる。特に、2021年に5Gネットワークの環境が整備されるにつれ、5GスマホとARメガネの統合は、ARアプリをよりスムーズに実行させることを可能とするだけでなく、新たな機能として高度なパーソナルオーディオビジュアルエンターテインメントを実現できるようになる。このため、スマホサプライヤとモバイルネットワーク事業者が、2021年にARメガネ市場に参入することが期待される。
5. 自動運転:ドライバー監視システム(DMS)の人気が急上昇
自動車の安全技術は、車外のみならず車内でも重要視されるようになる。センシング技術により、ドライバーの状態監視などが可能になるためだ。このドライバー監視システム(DMS)の普及は、よりアクティブで信頼性が高く、正確なカメラシステムの開発に焦点を当てることになろう。虹彩追跡と行動監視を通じてドライバーの眠気や注意の散漫を検出することで、不適切な運転をリアルタイムで識別できる。より高度かつ安全な自動運転を実現するために、DMSを統合した車両は、近い将来、量産に入ると予想されている。
6. 小型ディスプレイ:画面スペースを増やせる折りたたみ式ディスプレイ
この数年で折りたたみ式スマホが次々とリリースされるようになってきた。今後もパネルメーカーがフレキシブル有機ELの生産能力を拡大するのに合わせて、スマホメーカーは折りたたみ式スマホの開発に引き続き注力していくことが予想される。
また、折り畳みの機能は、他のデバイス、特にノートブックPCにも浸透しつつあり、さまざまなメーカーがそれぞれ独自のデュアルディスプレイノートブック製品をリリースするようになってきた。そうした折りたたみノートパソコンは、2021年にさらに多く発売される可能性がある。
7. 大型ディスプレイ:白色OLEDの代替を目指すミニLEDとQD-OLED
2021年には、ハイエンドテレビ市場でディスプレイ技術間の競争が激化すると予想される。特に、ミニLEDバックライトにより、液晶テレビはバックライトゾーンをより細かく制御できるため、現在の大型テレビと比べ、よりコントラスト比を高めることが可能となる。その費用対効果を考えると、ミニLEDは白色有機ELの強力な代替品となるうる。
一方、Samsung Display(SDC)は、大型液晶パネルの製造事業を終了し、競合他社との技術的差別化のポイントとして、QD-OLED技術を掲げている。QD-OLEDは、彩度の点で白色OLEDよりも優れており、テレビ仕様の新しいゴールドスタンダードを設定することを目指している。TrendForceは、ハイエンドテレビ市場が2021年下半期に激しい競争環境となることを予測している。
8.半導体実装:HPCとAiP向けで躍進する高度なパッケージング技術
新型コロナウイルスのパンデミックの影響にもかかわらず、高度なパッケージング技術の開発は減速していない。
さまざまなメーカーがHPCチップとアンテナ・イン・パッケージ(AiP)モジュールをリリースするにつれて、TSMC、Intel、ASE、Amkorなどの半導体企業も急成長する高度な先端パッケージング分野に参入しようとしている。
HPCチップパッケージングに関しては、これらのチップのI/Oリード密度に対する需要の増加により、チップパッケージングに使用されるインターポーザーに対する需要も増加している。
TSMCとIntelはそれぞれ、新しいチップパッケージングアーキテクチャである3Dファブリックとハイブリッドボンディングをリリースしたが、第3世代のパッケージングテクノロジ(TSMCのCoWoSとIntelのEMIB)を第4世代のCoWoSとCo-EMIBテクノロジに徐々に進化させている
2021年にこの2つのファウンドリは、ハイエンドの2.5Dおよび3Dチップパッケージングの需要から利益を得ようとしている。AiPモジュールは、2018年に最初の製品がリリースされたが、2021年からは5Gのミリ波デバイスへの搭載が徐々に進むと予想されている。5G通信とネットワーク接続の需要に牽引されて、AiPモジュールはスマホから自動車およびタブレットに採用範囲を拡大すると予想される。
9. 半導体ソリューション:半導体企業はAI/IoT市場でシェア拡大を目指す
IoT、5G、AI、クラウド/エッジコンピューティングの急速な発展に伴い、チップメーカーの戦略は、単一のハードウェア製品からソリューションの提供へと進化し、それによって包括的なきめ細かいチップエコシステムを構築するようになってきている。一方で、市場のニーズに合わせて限られた時間内に幅広く対応することができなかったチップメーカーは、単一の市場に過度に依存するリスクにさらされる可能性がでてくることとなる。
10. テレビ:マイクロLEDテレビが待望のデビューを果たす
近年のSamsung、LG、ソニー、Lumensによる大型マイクロLEDテレビの開発は、大型テレビにおけるマイクロLED時代の開幕を印象付けた。
2021年にはSamsungが業界初となるアクティブマトリックスマイクロLEDテレビをリリースする予定である。り、したがって2021年は、テレビへのマイクロLEDの採用元年となることが期待される。しかし、マイクロLEDメーカーにとって、マイクロLEDテレビを市場に投入する現時点での最大の課題は、技術とコストであるといえる。