GLOBALFOUNDRIES(GF)の中国四川省成都市の半導体工場(ファウンドリ)が2020年5月中旬までに閉鎖され、従業員が解雇されたと複数の中国メディアが報じている。成都の地元メディアは、すでに工場の建屋は閉鎖され、従業員全員に解雇通知が手渡されていることを確認したという。

1年以上前から成都工場には、半導体製造装置が運び出されたとか、従業員に退社奨励が出された、さらには操業停止や閉鎖のうわさが出されていたが、GFは一切のコメントを避け続けてきたし、原稿執筆時点(5月28日)での正式な発表も行われていない。しかし、同社の事業所所在地を示す地図に成都工場は存在していない。

イスラエルのファウンドリであるTower Semiconductor (旧Tower Jazz Semiconductor)が 300mm RF SOIプロセスを拡張するためにGFの成都工場を買収する可能性があるとの憶測も流れていたが、うわさのまま終わってしまったようだ。この売却交渉のために工場閉鎖が延期されていたという見方もあるが真相は不明である。

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    世界各地のGFの工場や研究所、オフィス所在地などを記した地図に中国成都工場の存在はない (出所:GF Webサイト)

GFは、製造業の米国回帰を叫ぶトランプ大統領の意向に反して、2017年に世界最大の半導体市場である中国への進出を決め、成都で300mmファブの建設を始めた。総投資額は100億ドルの予定であった。しかし、その後、企業業績が悪化し、2018年6月より従業員のレイオフが始まり、成都工場への投資もストップした。2018年8月には、7nm以降の微細プロセス開発や製造受託を中止し、多くの微細化プロセス技術者が解雇されたほか、母体となったAMDはじめ有力顧客が他社に乗り換えを進めたことで、ますます窮地に追い込まれることとなった。

GF成都工場は米国本社のプロセスの微細化に関する方針変更にともない、2018年10月末に、当初計画していた180/130nmロジックプロセスの採用が不可能となり、22FDX(22nmによる完全空乏型SOI)プロセスのみ受託生産することを決めた。しかし、その後、量産を始めた形跡はなく、そのまま閉鎖に追い込まれてしまったようだ。

最後まで残った従業員はわずか74名だけで、残務処理のためマネージャー2名を除き全員に解雇通知が手渡されたという。

GFは近年、米国ニューヨーク州のFab 10(旧IBMイーストフィシュキル工場)を米ON Semiconductorに、シンガポール工場のFab 3Eを台Vanguard International Semiconductor(VIS)に、ASIC事業として独立させた「Avera Semiconductor」を米Marvell Semiconductorに売却するなど、身をそぎ落とすようにファブや事業の売却を行ってきたが、今回の成都のファブ閉鎖により、GFの先行きを不安視する業界関係者も少なくないようだ。