高校野球の春の甲子園を目前にした3月15日~18日、埼玉県さいたま市のソニックシティとサイデン化学アリーナを会場に、科学技術振興機構(JST)が主催する「第8回科学の甲子園全国大会」が開催される。

全国各地で開催された都道府県大会を勝ち抜いた47代表校の高校生たちが、科学の知識と技能の頂点を目指して、チームで筆記競技と実技競技に挑む。この大会の最大の特徴は6~8名の団体戦だという点で、どの競技も個人の力もさることながら、いかにメンバーが協力し合えるかが結果につながる。その点はスポーツの団体競技にも通じる。

大会に先立ち2月13日、JSTの東京別館で記者説明会が行われた。冒頭の科学の甲子園推進委員会 漆原秀子委員長の挨拶では、「都道府県大会には過去最多の9075名が参加したこと」、「この激戦を勝ち抜いた47チーム361名が全国大会に出場すること」が紹介された。さらに今大会のみどころとして、「女子生徒の比率が過去最高の19.7%に達したこと」や、「高校1年生だけで結成されたチームが3つあること」などが紹介された。

  • 漆原秀子委員長
  • 参加者推移
  • 「第8回科学の甲子園全国大会」の説明をする漆原秀子委員長と大会参加者の推移

続いて、3題出される実技競技のうち事前公開競技となっている「ツール・ド・さいたま」の実演が行われた。所用時間150分のこの競技では、制限時間60分でジャイロ2輪車を制作して、電気二重層コンデンサを電源としたモーターに手回し発電機で充電し、その動力で30m(予選レース、決勝レースは33m)のコースを走らせる必要がある。ジャイロ効果を効率良く得られ安定感のある2輪車をつくることが最大のポイント。加えて、充電時間もレースタイムに含まれるため、充電時間、蓄電量、速度のバランスをどうとるかも勝敗を左右することとなる。複数の要素を組み合わせ、4人一組となった高校生がどんな2輪車を走らせてくれるか楽しみだ。

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  • コースを疾走するジャイロ2輪車

代表生徒たちが大会に向けた抱負を披露

説明会では、現存する日本最古の公立女子高校である栃木県立宇都宮女子高等学校と、自由な校風で知られる中高一貫校の東京都立武蔵高等学校から、それぞれ2名の生徒が参加し、全国大会へ向けた抱負を語ってくれた。

宇都宮女子高校の2名は、中学生の頃に参加した「科学の甲子園ジュニア全国大会」で、チームメートと知恵を絞り合って協力し合うことで大きな課題を乗り越えた経験をしたこと、この経験を再びしたいと思い「科学の甲子園全国大会」への出場を目指したことを語ってくれた。また、大会を目指して勉強を重ねる中で新しいことを知ったり、その知識を活かしてものづくりをしたりする楽しさを感じており、大会では唯一の女子高として、ほかの代表校と肩を並べる成績を残して存在感を示したいと抱負を述べてくれた。

  • 宇都宮女子高校

    宇都宮女子高校の2人

一方、チームが男女それぞれ3人から成る都立武蔵高校からは、男女1人ずつが出席。男子生徒からは、中学生科学コンテストでは予選で敗退してしまったので、今大会でそのリベンジを果たしたいと思っていること、未学習の内容が出題されることに対して、教科書を自主的に読み進めるなど地道に対策していることが紹介されたほか、効率的に学ぶには仕組みを理解するのが大事だとの気付きを得たことが語られた。また、女子生徒からは、普段の生活にはない貴重な経験ができることや、全国から集まった同世代の仲間との交流を楽しみにしていることが話された。最後に、各都道府県を代表する強者達とのハイレベルな戦いが楽しみだと、初出場ながら強気に挑んでいく姿勢を示してくれた。

  • 武蔵高校

    武蔵高校の2人

大会参加生徒へのエール

第8回を迎えた科学の甲子園は、その趣旨に賛同する企業・団体も増えており現在31に及んでいる。会見当日は、協賛ならびに応援企業・団体を代表して、武蔵野銀行の森山誠一氏が登壇し、「ダメとか無理と思った時点で何事も前に進まなくなってしまう。こういった考えは排除して、取り組んでもらいたい」と生徒たちにエールを送った。

  • 武蔵野銀行の森山氏

    武蔵野銀行の森山氏

また、第1回、2回の科学の甲子園全国大会に参加し、現在、東京大学大学院修士課程1年で天文学の研究をしている谷口大輔氏が、OB・OG代表として初めて登壇。この大会が全国の科学好きの高校生と交流できる貴重な機会であること、その縁は今も続いており、自分が天文学という分野融合的な進路を選んだのにも少なからず影響していることに触れ、ここで育まれた縁を大切にして欲しいと大会参加者ならではの体験を語ってくれた。

  • 東大の谷口氏

    天文学の魅力について語る谷口氏

なお、4日間にわたる大会は、3月15日に青森県立弘前高等学校の生徒による選手宣誓で開会する。筆記や実技の競技のほかに、他校の生徒と交流を深める「スワップミート」や、ポスト平成時代に活躍が期待される若手研究者の話を聞く「特別シンポジウム」も予定されており、生徒たちは学校での日常とは違った貴重な経験をすることになる。今年も、高校生たちが仲間と共に課題を乗り越え、成長する姿から目が離せないことになりそうだ。